どの子供も
親二人!
Goto CRN Japan Home English Français
Español Italiano
한국어
 便利な情報
list bullet 親を探す
list bullet 児童拉致
list bullet 子供の親権
list bullet 子供の面会権利
list bullet 結婚
list bullet 離婚
list bullet 養子縁組
list bullet 虐待
list bullet 防止対策
 ニュース
list bullet 個人経験
list bullet 新聞、雑誌等の記事
list bullet 成功話
list bullet イベント
list bullet 掲示板

Yahoo! JAPAN


 法律
list bullet 日本法律
list bullet 法律関係書類
list bullet 日本での個人権利
list bullet 国際条約
list bullet 他国の法律
list bullet 差別
 情報
list bullet 弁護士
list bullet カウンセリング
list bullet 私立探偵
list bullet ほか団体等
list bullet 片親に対する疎外症候群(PAS)
list bullet 日本語翻訳
 CRN日本について
list bullet CRN日本とは?
list bullet 子供の人権問題点
list bullet CRNの入会
list bullet 参加する
list bullet 賛助

visit counter
今までの訪問者

日本政府第1回報告


1996年5月30日

序論

 児童は、人として尊ばれる
 児童は、社会の一員として重んぜられる
 児童は、よい環境の中で育てられる

1.これは、我が国が、国民の世論と運動の盛り上がりを背景に、1951年に制定、宣言した児童憲章の基本綱領で謳われているものであり、今日に至るまで、児童の基本的人権を認め、その福祉の保障と増進を誓った重要な基本的理念として、多くの国民の間で認識されてきた。そして、1994年4月22日、児童の権利に関する条約を批准したことを契機に、児童の人権に対する関心は一層高まり、児童の人権の尊重と保護の精神は、従来にも増して、より多くの国民の間に理解されてきている。

2.我が国の憲法は、基本的人権の尊重を重要な柱としており、第97条においては、基本的人権を「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」としている。この基本的人権には、(i)身体の自由、表現の自由、思想・良心の自由、信教の自由等のいわゆる自由権的権利、(ii)教育を受ける権利、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利等のいわゆる社会的権利等が含まれている。

3.児童についても、その基本的人権は憲法の下で保障されているが、とりわけ、児童については、その心身にわたる福祉の増進を図るため、児童福祉法が1947年に制定された。同法第1条は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と規定している。この規定は、親、保護者、教師も含めた社会の構成者たるすべての国民が、それぞれの立場において児童の最善の利益を考え、児童の健全育成に責任を負っていることを明らかにするとともに、児童も一人の人間として尊重され、かかる意味でいかなる差別もなく平等に基本的人権を享有することを確認しているものである。また、同法第2条では、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と定め、児童の福祉に対する国及び地方公共団体の責任を明らかにしている。更に、同法第3条では「前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない」と規定し、第1条及び第2条の児童福祉の原理が、児童福祉法だけでなく、児童に関するすべての法令の施行に際し、尊重されなければならないことを明らかにしている。このような、児童福祉法に定められている児童に対する施策の基本原則は、この条約の精神とも合致するものであり、我が国は、かかる原則の下に、福祉や教育等に関するさまざまな施策の充実を図っている。

4.福祉の面では、児童福祉法に基づき、児童相談所や養護施設及び保育所等の児童福祉施設の充実が図られ、児童の保護、家庭への支援等が行われている他、母性、乳幼児の健康の保持、増進を図ることを目的とした母子保健法の下に、妊産婦、乳幼児の保健指導、三歳児などへの健康診査、栄養摂取の援助、未熟児の養育医療、母子健康手帳の交付など、母子の健康及び保健サービスが実施されている。また、児童の養育への支援として、児童手当法等に基づいた給付を行うことにより、児童の福祉の増進を図っている。なお、近年においては、少子化の進行や女性の社会進出など、児童を取り巻く環境が変化しており、これらの変化に対応した施策の充実が必要であるが、政府としては、いつの時代にあっても児童の最善の利益を考慮に入れ、児童の福祉の増進に努めている。

5.教育は、児童の能力を伸長し、社会に適応する能力を持った人間を育てる大切な活動である。政府は、教育基本法及び学校教育法の下に、教育の普及に鋭意努めてきたところであり、義務教育課程での就学率はほぼ100%に達している。教育基本法では、個人の尊厳を重んじる教育の普及を謳っており、その理念に基づき、「個性重視の原則」を基本原則として掲げ、児童の人権に十分配慮し、一人一人の個性を大切にした教育、指導を行っている。 

6.また、児童が自ら考え、主体的に判断し、行動することができる心身ともに健全な人間として育つためには、学校における教育のみならず、学校外において生活体験や活動体験を豊富に経験することが重要である。このため、我が国では、1992年度より、学校週5日制を導入した。これは、児童の生活リズムにゆとりを与え、家庭や地域で児童により豊かな生活体験や活動体験を提供する契機となっている。また、我が国の児童福祉法では、児童に健全な遊びを与え、その健康を増進し、又は情操を豊かにすることを目的とした児童厚生施設について規定(第40条)しており、その充実を図っている。

7.児童は、心身ともに成長段階にあり、人権を享有するに当たっては、特別な保護が必要であり、特に、児童を有害な環境から保護することは極めて重要である。この点については、刑法、児童福祉法、労働基準法等により、あらゆる形態の搾取、虐待等から児童を保護するための適当な措置を講じているが、政府としては、これら関係法令による取り締まり等の他にも、家庭、学校、地域社会の緊密な連携の下に、広報啓発活動及び有害環境の浄化活動を推進するとともに、児童の補導活動、相談活動を行う等国民的課題として積極的に取り組んでいる。

8.また、非行のある児童に対しては、できるだけ早く保護し、適切な指導を行うとともに、そのための環境にも配慮することが必要である。このような考えに基づき、少年法及び児童福祉法等関連法令の下に、少年事件等の処理体制、矯正処遇、環境調整も含めた更生保護及び不良児童の教護の充実強化を図り、非行の再発を防ぐとともに、社会への円滑な復帰の実現を支援している。

9.国際協力については、我が国は、政府開発援助大綱(ODA大綱)において、ODAの効果的実施のための方策の一つとして児童等社会的弱者にも十分配慮するよう掲げている。このような考えの下、二国間援助により学校の校舎建設や母子保健、小児病院プロジェクト等への協力を行っているほか、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)等の国際機関を通じた資金協力等も行い、世界の児童の人権の尊重と保護を目指した国際協力を積極的に実施している。

10.児童の権利に関する条約は、すべての児童の権利保護を具体的に実現していくための重要な原則を謳ったものである。我が国は、この条約の批准以来、この条約の効果的実現のために現行法制の下、さまざまな施策の充実のため努力を払ってきた。しかし、実際には、家族等人間関係の希薄化、有害な情報の氾濫など現代社会の抱える荒廃した一面による影響を受けて、児童の虐待や少年非行、いじめ等の事態が深刻化するなど、児童を取り巻く環境には新たな課題も生じている。

11.すべての児童がその人格の完全なかつ調和のとれた環境の中で育つため、政府としては、その環境づくりに向けて引き続き効果的かつ総合的な施策の充実を図っていく必要がある。また、これまで、民間団体等も自主的にこの条約の効果的な実現に向けて取り組みを行っており、こうした活動も評価されるものである。したがって、この条約の効果的な実現のためには、政府のみならず、家庭、自治体、学校、警察、民間団体等社会全体が一体となって相互に連携を図りながら、児童の最善の利益を考慮しつつ、児童の人権の尊重及び保護に向けて取り組んでいくことが肝要であり、更には、国民一人一人がこの条約に対する理解を深め、その実現に向け努力していくことが不可欠である。

Ⅰ.条約の諸規定の実施のための一般的措置

 

A.国内法及び国内政策と条約の諸規定を調和させるためにとられた措置

12.我が国は、条約の批准に当たっては、国内法制度との整合性を確保することとしている。児童の権利に関する条約は、条約上の「児童」を「18歳未満のすべての者」と定義した上で、児童の人権の尊重、確保を目的として、表現の自由、思想・良心の自由等の自由権的権利や社会保障、生活水準についての権利等社会的権利等を広範に規定している他、児童の養育と発達における父母又は保護者の第一義的責任等児童の保護に資する事項並びに麻薬、性的搾取及び虐待からの保護、難民の児童の保護等現代社会の問題に対応した事項をも規定しているが、これらの内容の多くは、我が国も既に1979年に締結している経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約に規定されていること、また、憲法を始めとする現行国内法制によって保障されていることから、この条約の批准に当たっては、現行国内法令の改正又は新たな国内立法措置は行っていない。

13.なお、我が国は、国内法との整合性を保つために、以下の留保を付している。
 「日本国は、児童の権利に関する条約第三十七条(c)の適用に当たり、日本国においては、自由を奪われた者に関しては、国内法上原則として二十歳未満の者と二十歳以上の者とを分離することとされていることにかんがみ、この規定の第二文にいう「自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離される」に拘束されない権利を留保する。」
 これは次の理由によるものである。
 この条約第37条(c)は、「自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されるもの」とする旨規定している。ところで、この条約上、「児童」については、18歳未満のすべての者、ただし、その者に適用される法律によりより早く成年に達した者を除くと定義されている(第1条)が、「成人」についての定義はなく、右規定が、「児童」という若年者をそれ以外の年長者から分離することにより有害な影響を受けることを防止し、かつ、保護しようという趣旨であることにかんがみれば、ここでいう「成人」とは「児童」以外の者、すなわち18歳以上の者をいうものと解される。我が国においては、少年法上、20歳未満の者を「少年」として取り扱うこととし(少年法第2条)、20歳以上の者から受ける悪影響から保護するとの観点から、自由を奪われた者については、基本的に20歳未満の者と20歳以上の者とを分離することとされている。したがって、条約の定める分離の基準の年齢とは明らかな差異が存在するため、同規定に関し、留保を付すこととした。

14.なお、上記のとおり、条約の批准に当たっては、国内法の改正は行っていないが、児童の人格の完全なかつ調和のとれた発達が確保され、社会の中で個人として生活できるようにするためには、国内法制の下に、実体面において児童の保護及び福祉をより一層充実させていくことが重要である。児童の権利に関する条約の批准は、その効果的な実現に向けた施策の充実を図る契機となっている。

児童の人権擁護

15.この条約に認められる権利を含めて、児童の人権を保障する行政上の措置の一つとして、1994年度より、「子どもの人権専門委員」制度が開始された。「子どもの人権専門委員」は、児童の人権が侵害されないように監視し、もし、人権が侵害された場合は、その救済のため速やかに適切な措置をとり、また、地域住民や親子を対象とした座談会を開催するなどの啓発活動を行い、この条約の意義、内容や趣旨についての適切な理解を得ること、並びに、児童の人権を尊重する意識の一層の高揚を図ることをその職務としている。「子どもの人権専門委員」は、児童をめぐる人権問題に適切に対処するため、弁護士、教育関係者等である人権擁護委員が指名されており、児童の人権問題を主体的、重点的に取り扱っている。1996年1月1日現在、「子どもの人権専門委員」は、全国で515名が指名されており、すべての都道府県に設置されている。また、「子どもの人権専門委員」が指名される母体である人権擁護委員は、一般から選ばれた市民のボランティアが法務大臣から委嘱されたものであり、法務局・地方法務局の人権相談室や自宅などで人権相談を受けるなどの活動を積極的に行っている。

16.更に、法務省の人権擁護機関(法務省人権擁護局、法務局人権擁護部、地方法務局人権擁護課及び人権擁護委員)は、1994年度、 95年度、96年度の啓発活動重点目標をそれぞれ、「子どもの人権を守ろう」と定めた。この目標の下で、人権擁護機関は、学校その他の関係各機関と協力し、児童、家庭、地域社会に対して、児童の権利を尊重する意識の一層の高揚を図るための広報活動を重点的に行っている。

児童の虐待対策等

(a)都市家庭在宅支援事業

17.都市部における家庭内の育児不安、虐待及び非行等の養育上の諸問題に対応するため、民間施設の専門性を活用して近隣地域の家庭から相談を受け、必要に応じて家庭訪問を行う等による即時的継続的な在宅支援を行い、児童の権利擁護、健全育成及び資質の向上に寄与することを目的として、1994年度より開始された。1995年度は20ヶ所の民間施設で実施されている。

(b)児童虐待ケースマネージメントモデル事業

18.1996年度より、児童虐待ケースマネージメントモデル事業を開始した。児童の虐待の早期発見と迅速な対応、継続的なフォローアップのために、地域虐待対応ネットワークを構築し、虐待の早期発見に努めるとともに、ケースマネージメントを実施し、福祉事務所、医師、弁護士、警察等の関係者を含めたチームとの連携により、困難な事例に対応することとしている。

子育ての総合支援等

(a)エンゼルプラン

19.近年の少子化の進行や女性の社会進出等に対応して、1994年度に、今後10年間における施策の基本的方向と重点施策を盛り込んだ「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」を策定し、社会全体による子育て支援の機運を醸成するとともに、子育て支援のための施策を総合的に展開していくこととした。エンゼルプランは、子どもを持ちたい人が安心して出産や育児ができるような環境を整備するため、家庭における子育てを社会全体で支援し、その施策の促進において児童の最善の利益が最大限尊重されることを基本的視点としている。そして、重点施策として次の事項を掲げている。

(i)仕事と育児との両立のための雇用環境の整備
(ii)多様な保育サービスの充実
(iii) 安心して子どもを生み育てることができる母子保健医療体制の充実
(iv)住居及び生活環境の整備
(v)ゆとりある学校教育の推進と学校外活動・家庭教育の推進
(vi)子育てに伴う経済的負担の軽減
(vii)子育て支援のための基礎整備

 なお、エンゼルプランの具体化の一環として、保育対策の計画的整備を図っていくため、以下の「緊急保育対策等5カ年事業」が定められている。

 緊急保育対策等5カ年事業における整備目標等

また、文部省では、子育てや教育に係る経済的負担の軽減や家庭教育の充実に努めるとともに、受験競争の緩和を図り、学校内外を通じた「ゆとりある教育」を実現させるため、(i)子育てに伴う経済的負担の軽減、(ii)子育てに関する相談体制の整備等による家庭教育の充実、(iii) 体験的活動機会の提供等による学校外活動の充実、(iv)ゆとりある学校教育の推進に係る施策を積極的にかつ総合的に推進している。

(b)児童手当法の改正

20.児童手当制度は、家庭における生活の安定と児童の健全な育成に資することを目的とし、現金給付である児童手当を支給することをその内容として1972年から実施されている制度である。他方、児童や家庭を取り巻く環境の変化に対応するため、きめ細やかな育児支援サービスや児童の健全育成のための事業の充実を図ることとする改正が1994年度に行われた。

(c)こども未来財団の設立

21.1994年7月、育児支援事業や児童の健全育成事業を支援することを目的として民法に基づく財団法人である「こども未来財団」が設立された。同財団は、公的なサービスのみでは対応が容易でないサービスの実施を支援することとしている。

教育

22.文部省からは、各学校において、この条約の趣旨、原則の周知徹底を図るとともに、条約の趣旨を踏まえ、教育活動全体を通じて基本的人権尊重の精神の一層の徹底を図るよう教育関係機関に通知した。

国際協力

23.児童の人権の尊重及び保護のための国際協力についても一層の強化を図っている。特に、二国間協力としては、学校校舎・教室建設、母子保健、小児病院整備等教育、保健・医療分野を中心とした協力を行った。これらを含む社会インフラ分野に対し、1994年は約34億ドルの援助を行っている。近年、我が国の二国間ODAに占める社会インフラ分野のシェアは順調に伸びてきており(91年12.3% → 94年23.2%)、今後ともこの分野への協力を積極的に進めていくこととしている。なお、この分野において、地方公共団体が独自に行う国際協力にも積極的な展開がみられるところであり、政府としてもこうした地方公共団体の活動を支援している。

24.また、政府は、国際機関と協調した国際協力も実施しており、児童救済機関の指導的機関である国連児童基金(UNICEF)に対しては、毎年拠出額を漸増させており、1995年度は2,943万ドル(世界第5位)を拠出しているほか、世界保健機関(WHO)を通じ、結核対策事業、ポリオ対策事業、エイズ対策事業等母子保健の向上等のために積極的な貢献を行ってきている。

25.更に、国際協力においては、NGOの活動も高く評価されるところであり、政府は、NGO支援として、1989年よりNGO事業補助金制度及び草の根無償資金協力の制度を導入し、毎年その支援の強化を図っている。NGO事業補助金の交付に当たっても、母子健康に関する事業等を積極的に重視している。1995年度に保健衛生及び医療事業に対し交付した補助金は、それぞれ25,100千円(対前年比16,700千円増)、229,900千円(対前年比55,787千円増)であり、1995年度におけるNGO事業補助金全体のうち、保健衛生及び医療分野の占める割合は約40%にのぼる。 1995年度の草の根無償についても、医療保健分野で、約10.1億円、全体の3分の1にのぼる協力を行っている。

B.国又は地方レベルにおいて、児童に関する政策を調整し、条約の実施を確保するための既存の又は計画されたメカニズム

26.我が国は、児童を含めた青少年が、国の次代の担い手として心身ともに健やかに成長するよう、多種多様な施策を実施しており、関係する行政機関は多数に及んでいる。例えば、児童の健全育成、養護、保育に欠ける児童及び障害児の福祉、母子保健等に関する事務については厚生省が、少年非行の防止、少年の補導、犯罪等により被害を受けた少年の保護、少年の福祉を害する取締り等に関する事務は警察庁が、非行少年の裁判所への送致等に関する事務は検察庁が、非行少年の矯正、更生保護及び人権擁護に関する事務は法務省が、また、教育、スポーツ、文化等に関する事務は文部省が、更には、年少労働者の保護、職業訓練等に関する事務は労働省がそれぞれ所掌している。そして、これらの関係省庁の青少年に関する施策を政府全体として総合的かつ効果的に実施するために、総務庁が、青少年対策推進会議等を通じて関係省庁の施策の調整を行っている。

27.地方との関係についても、総務庁において、都道府県、政令指定都市の青少年対策主管部局との連絡会議を開催し、国、地方相互の情報交換を行うなど、青少年に関する施策につき国と地方を通じた総合的推進に努めている。

28.また、児童の健全な育成、人権侵害の防止や早期発見等に努めるため、青少年に関する相談窓口を設け、専門員等が随時相談に応じている。例えば、法務局人権擁護部(課)、児童相談所、教育センター、少年補導センター、少年鑑別所、都道府県警察本部の少年課等や警察署など種々の機関に相談窓口が設けられている(資料1参照)。窓口への相談等に対し、迅速かつ適切な対応を図っていくには、これらの相談機関の充実強化と相談機関相互の連携が重要であるため、全国を6ブロックに分け、各ブロックごとに相談機関の担当者の参加による連絡会議を開催している。

29.この条約に規定された義務の実施については、法務省、外務省、文部省、厚生省をはじめとした各行政機関が、それぞれの立場から各種施策を展開している。これらの施策の実施に当たっては、関係行政機関相互間において緊密な連携を図りつつ行っているところであり、政府全体としての連携の確保にも努めている。

主な青少年相談機関の概要

主な青少年相談機関の概要
 

C.条約の広報(第42条)

30.条約の趣旨、内容、正しい理解等を周知徹底するための広報としては、以下のとおり多くの省庁がパンフレット等を作成し、児童を含め広く国民に対しこの条約の周知徹底を図っている。条約を効果的に実施していくためにも、条約の広報は極めて有益であり、これまでに行った広報活動の反響や条約の周知の程度を勘案の上、今後も引き続き条約の趣旨、内容、正しい理解等の普及に努めていく予定である。

31.外務省では、政府の広報誌、テレビ・ラジオ等において、この条約の紹介・普及に努めている。また、ユニセフ駐日代表事務所と協力の上、条約の作成経緯及び全文を掲載したリーフレットを9万部作成し、福祉事務所、児童相談所、教育委員会、関心のある民間団体及び一般市民等に対し、配布している。更に、学校の各学級に1枚ずつ行き渡るよう、児童にもわかりやすく条約の内容を紹介したポスターを、文部省と協力の上、100万部作成し、各幼稚園、小、中、高等学校及び特殊教育諸学校の各学級、児童福祉施設並びに公立図書館等にも配布した。

32.法務省人権擁護局でも、条約の趣旨、内容の理解の促進とともに児童の人権意識の一層の高揚を図ることを目的として、啓発冊子「児童の権利に関する条約と子どもの人権」を10万部作成し、全国の法務局・地方法務局を通じて、学校、教育委員会、地方自治体等の関係機関に配布した。

33.厚生省においても、条約の内容を分かり易く解説したパンフレットを作成配布し、主に児童福祉に携わる者に対し周知を図っている。また、出産予定である妊婦に対し交付される母子健康手帳にもこの条約の主な内容を掲載するなど、広く国民に対しても条約の内容等の普及に努めている。

34.更に、文部省では、条約の趣旨について、各学校段階に応じ適切な指導がなされるよう、教育関係機関に対し条約の趣旨を生かして一層指導を充実していくべき主要な点につき通知するとともに、各種の広報誌や教職員を対象とする会議、研修会等を通じて、周知に努めている。また、学校においては、この条約等人権に関する国際法の意義と役割、基本的人権の尊重、児童の成長や人間形成について指導することとなっている。

D.報告書の公開措置(第44条6)

35.この条約の報告書については、関係省庁に配布するとともに、右省庁を通じ、地方自治体、教育委員会、福祉事務所、児童相談所、法務局人権擁護部(課)、ユニセフ駐日代表事務所等に配布する予定。また、外務省において、NGOの他、一般市民も随時入手可能とする予定。

児童の人口

36.我が国の総人口は、1994年10月1日現在、1億2,503万4千人であり、このうち児童(0歳~17歳)の人口は、2,551万6千人で、総人口の20.4%を占めている。

(資料2:児童の人口) (単位:千人)

総 人 口
0~17歳
   125,034 (100.0%)
25,516 ( 20.4%)
0~4歳
5~9歳
10~14歳
15~19歳
6,048 ( 4.8%)
6,723 ( 5.4%)
7,643 ( 6.1%)
8,867 ( 7.1%)

         (総務庁統計局調べ)

 

出生数

37.出生数は近年概ね減少傾向にあったが、1994年は、約124万人で、前年に比し若干増加している。

(資料3:出生数)    (単位:人)

  年度      出生数    
1980
1985
1990
1991
1992
1993
1994
1,576,889
1,431,577
1,221,585
1,223,245
1,208,989
1,188,282
1,238,328

            (厚生省調べ)

Ⅱ.児童の定義

成年

38.我が国では、民法により、満20歳をもって、単独で法律行為を行うことができることとなっており、また、公法上も、例えば国会 議員の選挙権は満20歳をもって与えられていることから、我が国では、成年とは、満20歳以上の者を意味する。

婚姻

39.婚姻は民法の規定により、男は18歳、女は16歳以上であることが要件となっており、20歳未満の婚姻については、父母の同意が必要となっている。
 なお、婚姻後は20歳未満の者でも単独で法律行為の当事者となり得る。

義務教育

40.義務教育は、6歳に達した日の翌日以降における最初の学年の初めから、15歳に達した日の属する学年の終わりまでとなっている。なお、我が国の学年は、「4月1日から翌3月31日まで」である。

裁判所での任意陳述

41.民事訴訟及び民事調停については、未成年者(20歳未満)は、訴訟能力を有しないので、法定代理人を通じて陳述することとなる。他方、人事訴訟、家事審判及び家事調停では、意思能力のある限り、訴訟能力を有することとなっているので、意思能力のある限り陳述できることとなっている。

刑事責任等

42.我が国の刑法は、14歳未満の者の行為は罰しない旨規定している。他方、我が国の少年法では、「少年」は 20歳未満の者を指し、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整を図るとの観点から、20歳未満の者は、すべて、保護手続を行う家庭裁判所において、保護処分が適当か否かを検討され、適当でないと判断された者のみ(ただし、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪を犯した少年で、かつ、16歳以上の者に限る。)が刑事手続へ移行することとなっている(詳細は、256(iii)参照)。

43.また、同様の観点から、拘禁等自由のはく奪の措置に際しても、20歳未満の者は、20歳以上の者と異なる手続をとられることとなっている(詳細は、277参照)。

労働

44.労働基準法により、満18歳未満の者については、労働時間、休日労働についての制限、深夜業の原則禁止、危険有害業務の就業制限を規定している。また、満15歳に満たない児童を労働者として使用することは原則として禁止している。ただし、例外として、非工業的事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、労働が軽易であるものについては、行政官庁の許可により、満12歳以上の児童を使用することができ、また、映画の製作又は演劇の事業については、行政官庁の許可により、満12歳に満たない児童を使用することが可能である。
 なお、労働基準法の規定は、パートタイムの雇用についても適用される。

性犯罪

45.刑法においては、13歳未満の児童に対する性行為又は猥褻行為は、暴行又は脅迫を用いたか否かを問わず、処罰の対象となっている。このほか、児童福祉法が、18歳未満の者に淫行させる行為、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもってこれを自己の支配下に置く行為等を禁止しており、これに違反した者を処罰することとしている。

軍隊への入隊

46.我が国では、徴兵は行っていない。自衛官の任意採用に当たっては、原則として18歳以上の者を採用している。ただし、例外として、15歳以上17歳未満の者を自衛隊生徒として採用している(詳細は、255参照)。

アルコール他

47.未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法が、満20歳に至らざる者についての飲酒、喫煙を禁止するとともに、親権者の制止義務等を規定している。
また、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律では、風俗営業、風俗関連営業、飲食店営業の営業所で20歳未満の者に酒類やたばこを提供することを禁止している。

Ⅲ.一般原則

 

A. 差別の禁止 (第2条)

48.我が国の憲法は、その第14条第1項において、「すべて国民は・・・人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、・・・差別されない」と規定し、児童を含めたすべての国民に対し法の下の平等を保障している。この「法の下の平等」の原則により、国による児童に対するあらゆる形態の差別が禁じられている。

49.また、憲法の精神に則り、児童福祉法が、その第1条第2項において、「すべての児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護される」と規定しているほか、生活保護法第2条(保護の無差別平等)、障害者対策基本法第3条(すべての障害者の処遇保障)、教育基本法第3条第1項(教育の機会均等)等の国内法でも、国による児童に対するあらゆる形態の差別が禁じられている。

50.我が国の憲法は、我が国に在住する外国籍又は無国籍の児童についても、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、基本的人権の享有を保障している。児童の保護のための措置を広範に規定している児童福祉法をはじめ、児童手当法、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律等には国籍要件はなく、国籍によって取扱いに差異は設けられていない。また、教育についても、憲法及び教育基本法の精神に則り、すべての児童の教育を受ける機会の実現を図っている。なお、外国人児童が福祉サービスや教育を受けるに当たっては、言語上の困難がある場合があるが、政府では、外国語のパンフレットの作成配布や外国人専用の相談窓口を設ける等の各地方公共団体による外国語での情報提供の促進を図るとともに、日本語指導や生活面・学習面での指導についての施策を実施している。

51.仮に、私人間の関係において差別行為が生じた場合には、法務省の人権擁護機関において、その救済のため速やかに適切な措置がとられることとなっている。また、私法的関係については、民法により、不法行為が成立する場合は、このような行為を行った者に損害賠償責任が発生するほか、差別行為は、私的自治に対する一般的制限規定である民法第90条にいう公序良俗に反する場合には、無効とされる場合がある。更に、差別行為が刑罰法令に触れる場合は、当該刑罰法令に違反した者は処罰されることとなっている。

52.しかし、そもそも、児童に対する差別行為は、児童の人格形成に多大な影響を及ぼすものであり、すべての児童の人格の完全なかつ調和のとれた発達を確保するためには、いかなる差別もあってはならない。このため、学校教育においては、小学校、中学校及び高等学校の教育活動全体、特に社会科や道徳などにおいて、児童の発達段階に即しながら、人権を尊重し、誰に対しても差別や偏見を抱くことのないようにするとともに、同和問題などの諸課題について正しく理解するよう教育が行われている。また、大学又は短期大学においても、授業科目のうち特に人文科学・社会科学等の分野において、人権に関する学生の知識と理解が深められている。更に、社会教育においても、生涯学習審議会などの答申により現代社会の重要な学習課題として人権が挙げられていることなどを踏まえ、公民館等において人権に関する各種の学級、講座など多様な学習活動が行われている。このように、すべての児童の尊厳及び基本的人権が尊重されるためには、国民の児童の人権に対する意識の教育・啓発が必要であり、今後とも官民一体となった継続的な努力が肝要である。 

53.なお、我が国は、1995年12月15日に、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」を締結し、同条約は、1996年1月14日に我が国について効力が生じた。

B. 児童の最善の利益(第3条)

児童の最善の利益

54.憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される」と規定している。また、児童福祉法第1条が「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されるよう努めなければならない」と規定しているほか、同法第2条及び第3条並びに少年法第1条、母子保健法第3条等の法律において各々児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。

保護・援助の提供

55.我が国では、家族が、家族の構成員、特に児童の成長及び福祉のための自然な環境であり、また、父母又は法的保護者が児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有するという認識に基づき、父母等の権利義務を阻害しないよう配慮し、また、場合によっては、これらが全うできるよう側面的支援を行うことにより、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保している。

安全及び健康の分野、職員の数及び適格性の基準

56.我が国には、資料4のような児童福祉施設が存在するが、安全及び健康の分野、職員の数及び適格性の基準については、厚生大臣が定める「児童福祉施設の設備及び運営についての児童福祉施設最低基準」(省令)により規定されており、児童福祉法に基づき、児童福祉施設の設置者はこれを遵守しなければならないこととなっている。

57.右最低基準は、第1章総則で、児童福祉施設の構造設備の一般原則、非常災害、職員の一般的要件、衛生管理、給食、入所した者及び職員の健康診断等を規定するとともに、第2章から第10章までのそれぞれの児童福祉施設ごとに、設備の基準、職員の数及び適格性(資格)等につき詳細に規定している。例えば、保育所では、転落防止設備や警報設備の設置などを義務づけるとともに、3歳未満児には、最低で児童6人に1人以上の保母が配置されていなければならないこととされているほか、保育所が保育サービスを提供する上での指針となる「保育所保育指針」においては、保育原理として、生命の保持や情緒の安定、心身の健康の基礎の安定、人権の尊重と自立と協調等の目標を掲げ、これらに適した保育方法及び環境を提供することが求められている。

58.更に、施設設置につき認可を求める際には、経営の責任者、幹部責任者を明らかにすることとなっており、行政庁は、前記の最低基準を維持するため児童福祉施設の長に対して必要な報告を求め、定期的に施設に立ち入り、設備・運営等を検査でき、必要な改善を勧告し及び命令することができ、また、事業の停止を命令することができることとなっている。

C. 生命、生存及び発達に対する権利(第6条)

生命に対する権利

59.憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と規定しており、児童を含む人の生命に対する固有の権利を保障している。

生存、発達に対する権利

60.憲法第25条は、すべて国民は最低限度の生活を営む権利を有すると規定しており、児童も含め人の生存に対する権利が保障されている。更に、児童福祉法第1条第2項が「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と規定しているほか、母子保健法第3条が「乳児及び幼児は、心身ともに健全な人として成長してゆくために、その健康が保持され、かつ、増進されなければならない」と規定しており、政府としては、これらをはじめとする関係国内法令に基づき、児童の健康を図るために、各種施策を講じてきており、その内容は年々充実している(施策の内容についてはⅥ A.及びC.参照)。

D. 意見表明の機会(第12条)

61.憲法第13条が個人の尊厳の尊重について、また、同第19条が思想及び良心の自由、更に同第21条が表現の自由について定めており、児童に対しても自己に影響を及ぼす事項について自由に意見を表明する権利が保障されている。

62.自己に影響を及ぼす司法上及び行政上の決定又は措置に関する手続のうち一般に意見聴取の機会が設けられている事項については、以下のとおり、児童に対しても意見表明の機会が保障されており、また、そのような事項の決定又は措置に当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されている。

司法上の手続

63.我が国では、一般的に、自らが裁判の当事者又は利害関係人となる場合には、自己の意見を述べる機会が保障されている。

(a)民事訴訟及び民事調停

64.未成年者は、民事訴訟においては、訴訟能力を有しないので、訴訟行為をするには、法定代理人の代理を要する(民事訴訟法第49条)。よって、児童が訴訟の当事者となる場合には、法定代理人を通じ、当事者として訴訟行為をし、意見を表明することができる。また、児童が訴訟の当事者とならない場合でも、児童が訴訟の結果につき法律上の利害関係を有するときは、補助参加人として訴訟に参加することが可能であり、参加人である児童は、法定代理人を通じて訴訟行為をし、意見を表明することができる。更に、民事調停においても、未成年者は、当事者又は参加人として、法定代理人を通じ、意見を表明することができる。

(b)人事訴訟並びに家事審判及び家事調停

65.未成年者は、人事訴訟においては、意思能力のある限り、訴訟能力を有するので、児童は、当事者又は補助参加人として、自ら又は法定代理人を通じて意見を表明することができる。
 家事審判及び家事調停においても、未成年者は、同様に意思能力のある限り当事者又は参加人として、自ら又は法定代理人を通じて意見を表明することができる。なお、家事審判においては、父母の離婚又は認知等の際の子の監護に関する審判、親権者指定事件、親権者変更事件等に関する審判を行う際には、子が満 15歳以上である場合には子の陳述を聴取しなければならないとされている。また、満15歳未満の場合や、その他の事件についても、家庭裁判所は職権で子の意見を聴取することができるほか、子が自発的に意見を述べたいという場合には、これを妨げるものではない。

(c)刑事訴訟及び少年審判

66.少年審判については、審判期日には、少年、保護者及び附添人を呼び出さなければならないとされ(少年審判規則第25条第2項)、保護者及び附添人は、審判の席において、裁判官の許可を得て、意見を述べることができるほか(同規則第30条)、審判の席には、少年の親族、教員その他相当と認める者に在席を許すことができるとされ(同規則第29条)、審判は懇切を旨としてなごやかに行うこととされている(少年法第22条第1項)ことから、少年、保護者等が自由な雰囲気の中で意見を陳述することができるような配慮がなされている。また、少年等に意見を陳述する機会が与えられていることを前提として、少年等の陳述要旨の審判調書への記載に関する規定(同規則第12条、第33条)等が置かれており、児童の意見聴取の機会は与えられている。なお、我が国では、少年が罪を犯した場合には、少年法等により、すべての事件について、保護手続を行う家庭裁判所により保護処分が適当か否か検討されるが、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件を犯した者で、かつ、16歳以上の少年のうち、刑事処分に付するのが相当と判断された場合に限り、刑事手続に移行する。そして、刑事手続においても、刑事訴訟法に基づき、冒頭手続で被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならないとされ、証拠調べが終わった後、被告人及び弁護人は、意見を陳述することができるとされている。また、被告人が任意に供述する場合には、裁判長はいつでも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができるとされている。

行政上の手続

67.我が国は、行政処分に至る事前の段階において、不利益処分につき、行政手続法により、原則として聴聞又は弁明の機会を与えており、また、行政処分が行われた後の段階において、行政不服審査法により、不服申立ての手段が認められており(聴聞を経てされた不利益処分についての異議申立ては不可)、意見陳述の機会が保障されている。また、その他にも、個々の行政処分又は措置の手続において、意見聴取の機会を保障している。

(a)教育

68.障害のある児童生徒の教育措置の決定に当たっては、就学指導委員会において、教育的、心理的、医学的な観点から検討が行われ、その結果を踏まえ、教育委員会により、就学相談等を通じ保護者等の意向も聞いた上で判断がなされている。

69.学校において児童に対し懲戒処分を行う際には、当該児童生徒等から事情や意見をよく聞く機会を持つなど児童生徒等の個々の状況に十分留意し、その措置が単なる制裁にとどまることなく真に教育的効果を持つものとなるよう配慮することについて、教育関係機関に通知したところである。

(b)福祉

70.都道府県による児童福祉施設への入所措置は、原則として親権者又は後見人の意に反して行うことはできないこととされているとともに(児童福祉法第27条第4項)、児童相談所は児童、保護者との面談等により、児童の状況を調査し、また、診断、判定を行うこととされており、具体的な処遇を決定する際には、児童や保護者の意向を十分尊重するよう児童相談所運営指針に定められている。また、都道府県知事、市町村長、福祉事務所長又は児童相談所長は、児童の保育所、精神薄弱児施設等への入所措置の解除の際には、あらかじめ、児童の保護者に対し、措置解除の理由を説明するとともに、その意見を聞かなければならないこととなっている(児童福祉法第33条の4)。

(c)矯正

71.矯正施設においては、児童に影響を与える手続を行う際に、当該児童の意見を聴取する運用を行っている。例えば、実際、懲罰又は懲戒を行う際には、あらかじめ、本人に規律違反行為の容疑事実を告げた上、弁解の機会を与えている。

Ⅳ.市民的権利及び自由

 

A.氏名及び国籍(第7条)

登録される権利

72.我が国では、戸籍法において出生後14日以内に出生の届出が義務づけられているほか、父母の氏を称する子は父母の戸籍に、父の氏を称する子は父の戸籍に、母の氏を称する子は母の戸籍に入ることが規定されており、更に、住民基本台帳法第8条において住民票の記載を行うことが規定されている。

73.また、我が国において出生した外国人についても、戸籍法において同様に出生の届出が義務づけられている。更に、棄児については、棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、24時間以内にその旨を市長村に申し出る義務があり、申し出を受けた市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、これらとともに男女の別、出生の推定年月日等を調書に記載し、これに基づいて棄児について新戸籍が編製されることとなっている。

氏名を有する権利

74.民法第790条において、嫡出子は父母の氏を非嫡出子は母の氏を称する旨定められている。また、名については、戸籍法により、出生後に届出が義務づけられている出生届書には出生した子の名を記載することとなっている。

国籍を取得する権利

75.我が国の国籍法は、原則として父母両系血統主義を採用しており、出生の時に父又は母が日本国民であるときは日本国民となると規定している(国籍法第 2条1号)。しかし、この主義を貫くと、我が国で出生した子が無国籍となる場合も生じうることから、これを防止するため、出生地主義を加味するという配慮をしている。すなわち、子が日本で生まれ、父母がともに知れないとき、又は父母が国籍を有しないときは日本国民となるとされている(国籍法第2条第3 号)。
この措置によっても、限られた範囲で、なお、無国籍が生ずる場合があり得るが、国籍法第8条第4号により、日本で生まれ、かつ、出生の時から3年以上日本に住所を有するものについては、帰化によって日本国籍を取得することが可能であり、しかもこの場合は、帰化許可条件のうち、能力条件及び生計条件を要していないほか、住所条件も緩和されているので、日本国籍の取得が極めて容易になっている。

父母を知る権利

76.我が国において出生した者は、戸籍法に基づき、出生届書に父母の氏名を記載しなければならず、また、日本人については戸籍に実父母の氏名を記載しなければならないので、本人は戸籍の謄抄本等により、父母を知ることができる。非嫡出子についても、父については、戸籍法施行規則第35条により、父の認知の届出がされた後、認知された子の戸籍に父の氏名及び認知された事実が記載されることとなっており、認知された非嫡出子は、戸籍の謄抄本等により父を知ることができる。

77.特別養子縁組(145.参照)においては、養子縁組の審判が確定し、養親が届出をすると、実親の本籍地に特別養子を筆頭者とする単身戸籍が編製され、更に、特別養子は、この戸籍から養親の戸籍に入籍し、単身戸籍は除籍となるが、自らの実親を知りたい特別養子は、自らの除籍となった戸籍から実親の戸籍を検索し、実親につき調査することはできるものとされていることから、特別養子制度においても、児童が自らの実父母を知る権利は確保されている。

78.なお、外国人についても、我が国で出生した場合は、出生届出が義務づけられており、出生届書は届出後10年間は保存されることとなっているので、10年間は出生届書の閲覧又は記載事項証明により父母を知ることができる。  

父母によって養育される権利

79.民法の定めにより、成年に達しない子は、父母の親権に服し、親権者は子の監護義務を負うとされていることから、父母を有する児童は、父母の婚姻中は、原則として父母によって養育されることとなっている。 \

B.身元関係事項の保持(第8条)

80.身元関係事項に当たる児童の国籍、氏名、家族関係等を保持する権利を保障するため、我が国では国籍については、日本国籍の喪失、国籍の選択についての要件を定め、国籍喪失の場合等には届出を義務づけ、国籍が不法に奪われることのないようにしている。

81.氏名については、氏名の変更の場合家裁の許可を得てその旨の届出を義務づけている。家族関係については、親族の範囲を定め、氏名、実父母との続柄、本籍、出生年月日については戸籍に記載しなければならないこととなっている。

82.児童の身元関係事項が不法に奪われた場合、すなわち、仮に何らかの理由で、戸籍の記載が不適法なものであること、又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることが発覚した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができるとされている。

C.表現の自由(第13条)

83.我が国においては、児童も含めすべての国民に対し、憲法第21条により表現の自由が保障されており、民主主義の維持に不可欠のものとして最大限尊重されている。他方、表現の自由は、内心の自由とは異なり本質的に社会性を帯びていることから、例えば、公然わいせつ、わいせつ物頒布等の禁止(刑法第 174条、第175条)、他人の名誉の毀損、侮辱、信用の毀損の禁止(刑法第230条、第231条、第233条)、騒乱の禁止(刑法第106条)等「公共の福祉」を理由として一定の制限が課されているが、これらの制限は、いずれもこの条約第13条2の規定に合致する必要最小限のものである。 

84.学校においては、児童生徒が心身の発達過程にあること、学校が集団生活の場であること等から校則が必要である。校則は、日々の教育指導に関わるものであり、児童生徒等の実態、保護者の考え方、地域の実情、社会の変化、時代の進展等を踏まえ、より適切なものとなるよう絶えず見直しを行うことについて、教育関係機関に通知したところである。

D.適当な情報の利用(第17条)

85.児童福祉法、放送法、学校図書館法及び図書館法等があり、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料を利用することができるよう、これらの法令に基づく措置により、具体的には次のようなことが実施されている。

(a)図書館の設置
86.図書、記録その他の資料を利用し得る公共の図書館が、1993年度現在、全国に2,138館あり、政府は、地方公共団体に対する図書館の施設、設備に要する経費等につき一部の補助を行っている。また、学校には、学校図書館が設けられている。

(b)児童文化財の推薦
87.中央児童福祉審議会及び都道府県児童福祉審議会が設置されており、これら審議会は、児童及び精神薄弱者の福祉を図るため、児童文化財の推薦を行うことができるとされている。中央児童福祉審議会では、1951年から専門家、学識経験者から成る文化財部会を設け、児童が楽しく利用し、情操を高め、諸能力を発達させる優良児童文化財の推薦を行っている。1995年における推薦件数は、出版物89点、音響・映像等49点、舞台芸術29点であった。なお、これまでに推薦された児童文化財の中から幼児、小学生を対象とした優れた作品を選び、それぞれ全国の児童館を巡回し、上演・上映する事業を実施している。

(c)映画
88.文部省では、児童向けの優れた映画等の制作を促進し、その利用普及を図るため、制作者からの申請に基づき、生涯学習審議会教育映画等審査部会における審査を経て、教育上価値が高い作品を「文部省選定」として、更にその中で特に価値の高いと考えられるものを「文部省特別選定」として決定し、それらの作品の概要を広報し、その利用普及に努めている。1995年は、「文部省選定」作品として264本、「文部省特別選定」作品として3本が選定となった。また、社会教育及び学校教育に役立つ教材映画のうち、文部省特別選定となった作品等を買い上げ、各都道府県及び政令指定都市教育委員会に配布している。

(d)放送番組
89.放送法では、教育番組の編集及び放送に当たっては、その放送の対象となるものが明確であるようにすること、内容がその者に有益適切であり、組織的、継続的であるようにすること、その放送の計画及び内容をあらかじめ公衆が知ることができるようすることのほか、当該番組が学校向けのものであるときは、その内容が教育課程の基準に準拠するようにしなければならないことと規定している。

90.政府でも、民間放送局による教育番組の充実向上と放送を通じた家庭教育の充実、青少年の健全育成に資するため、(財)民間放送教育協会にテレビ家庭教育番組の企画、制作、放送及び調査研究の事業を委託している。

国際協力

91.我が国の放送法は、日本放送協会による国際放送等の放送番組の編集及び放送又は外国放送事業者等に提供する放送番組の編集に当たって我が国の文化等を紹介して我が国に対する正しい認識を培い及び普及することを規定している。
政府では、1991年4月より、日本の教育番組等を開発途上国向けに翻訳する事業を支援するため、年間約2億円を「(財)放送番組国際交流センター」(外務省と郵政省の共管法人)を通じて補助している。1996年3月末までの実績としては、日本語から英語等へ吹き替えた番組が478本、提供された番組は 19ヶ国、368本となっている。

92.また、アジア・太平洋地域の子供たちに廉価で良質の本を提供するために、各国の児童書出版の専門家と協力して、児童図書の共同出版等を実施しているユネスコ・アジア文化センターに対し、助成を行っている。

93.更に、国際文化協力の一環として、文化無償協力により、教育・文化放送番組の供与を行っている。文化無償協力における教育文化放送分野(教育・文化番組、ソフト)での1995年度の協力実績(予算ベース)は、2件(61.1百万円)であった。

有害な情報からの保護

94.児童を取り巻く社会環境は、発達途上にある青少年の人格形成に強い影響を及ぼしている。特に、性的感情を著しく刺激し、又は粗暴性、残虐性を助長するおそれがあるといった児童の福祉に有害であると認められる情報、書籍等は、しばしば非行の誘因ともなっており、児童の健全育成の観点から憂慮すべき問題となっている。このような認識に基づき、有害な情報等からの保護については、次のような施策を実施している。

95.児童福祉法が中央児童福祉審議会及び都道府県児童福祉審議会による出版物を販売する者等に対する勧告(児童福祉法第8条第7項)を定めているほか、放送法では、放送事業者は、国内放送番組の編集に当たって公安及び善良な風俗を害しないことのほか、自ら番組基準を定め、これに従って放送番組を編集すること、放送番組の適正を図るために放送番組審議機関を設置することを規定している。

96.また、都道府県では、青少年に有害な図書、ビデオ、映画、広告物等を規制するために、それぞれの地域の実情に基づき、青少年保護育成条例を制定しており、1994年度においては、条例による有害指定件数は、71,828件にも上った(資料5参照)。政府としては、これらの条例の適正な運用、整備等による規制措置の徹底を推進している。

97.更に、政府は、社会環境の変化に応じて、関係業界に対し、有害な情報の提供の自粛・自制の要請等を行い、関係業界の支援を得て、児童の有害な情報からの保護を推進している。例えば、映画については、映画関係業界の独立機関である映倫管理委員会により、成人映画を指定し、これにつき18 歳未満の者の入場を事実上制限する映画倫理規程の管理、適用が行われている。

98.また、近年、メディアの多様化が著しく、社会に与える影響も増大し、児童の心身への影響が憂慮されていることにより、次のような措置がとられている。

(i)コンピュータソフトウェアについては、コンピュータソフトウェア倫理機構が、18歳未満の青少年への販売を禁止すべきソフトにシールを貼付し、明確に区別するなどし、また、1994年7月より、15歳未満の者への販売を禁止するR指定制度も導入した。

(ii)インターネットについては、1996年2月、パソコン通信サービスを提供する事業者を会員とする電子ネットワーク協議会が、電子ネットワークを活用する上での倫理的観点からガイドラインである「電子ネットワーク運営における倫理綱領」及び「パソコン通信を利用する方へのルール&マナー集」を作成した。また、警察では、パソコン通信を利用してわいせつ情報を提供する事犯について、1996年1月、インターネットを利用したわいせつ図画公然陳列事件を検挙する等、この種事犯の取締りを強化している。

(iii)更に、政府では、1996年5月より衣服を脱いだ人の姿態の映像を主たる内容とするCD-ROM等の販売等を風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の規制対象である風俗関連営業の要件に加えた。

99.なお、有害な情報等からの児童の保護の促進に当たっては、住民の活発な地域活動も重要であり、政府では、地域の団体、住民等による地域活動の促進も図っている。

E.思想、良心及び宗教の自由(第14条)

100.我が国では、憲法第19条が、児童を含めたすべての国民に対し、思想及び良心の自由について保障している。また、宗教の自由については、憲法第 20条第1項が信教の自由は何人に対してもこれを保障する旨規定しているほか、同条第3項においては、国及びその機関が宗教教育その他いかなる宗教的活動を行うことも禁止している。また、教育基本法第9条第1項において、宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない旨規定されている。

F.集会、結社の自由(第15条)

101.児童を含めすべての国民に対し、憲法第21条において、集会及び結社の自由が保障されている。他方、これらの権利は、表現の自由と同様、「公共の福祉」を理由として一定の制限を受けるが、これらの制限は、この条約第15条2の規定に合致する最低限度のものである。

G.私生活の保護(第16条)

102.我が国は、憲法や最高裁判所の判例により、児童を含めすべての者について、公的機関だけでなく、私人・私的団体からも、その私生活をみだりに公開されないことが、法的保護の対象とされている。

103.憲法第35条第1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、・・・正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」と規定しており、児童も含めすべての人の住居、所持品等について公権力による侵入等から保護する趣旨の規定が置かれている。これを受けて、刑事訴訟法においても、身体、物又は住居その他の場所に対する捜索、差押は、原則として裁判官による審査を経なければ行うことができない旨規定されている。また、刑法では、故なく住居等に侵入する行為を処罰することとし(刑法第130 条)、軽犯罪法では正当な理由なしに他人の住居等をのぞき見る行為を処罰することとしている(軽犯罪法第1条23号)。更に、医師、弁護士等、業務上他人の秘密を知り得る職にあるものについては、刑法をはじめ各種法律において、秘密保持等の義務を課せられ、また、刑法では、故なく封緘した信書を開抜した行為も処罰することとしており(刑法第133条)、個人の私生活の平穏に対する配慮が払われている。

104.通信に対する干渉を禁止するためには、憲法において、通信の秘密を保護している(憲法第21条第2項)ほか、郵便法で信書の秘密を確保するとともに、郵便の業務に従事する者は、郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない旨規定している(郵便法第9条)。また、電気通信事業法で、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を保護するとともに、電気通信事業に従事する者は、その取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない旨規定している(電気通信事業法第4条)。

105.名誉及び信用の保護に関しては、刑法が名誉毀損、侮辱及び信用毀損に関する罪を規定し、民法も、個人の名誉、信用を毀損された者の救済に関し規定している。この他、警察の捜査・調査活動における少年の呼出しが、当該少年の信用、名誉の失墜とならないよう、少年警察活動要綱により、学校、職場からの直接の呼出しを避けるなど、呼出しの時間、方法等について留意することとしている。

106.また、文部省では、児童生徒に対し教育を行うに当たり、児童生徒の私生活等に関与する場合には、児童の人権に十分配慮するよう教育関係機関に対し指導を行っている。

H.拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない権利(第37条(a))

107.児童の人間としての尊厳や人格を無視し、又はこれを著しく傷つけるような方法で児童が取扱われないことを確保するため、我が国憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定しており、また、同法第36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」とし、同法第38条第1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と定めている。

108.この憲法の下にあって、公務員が、その職権を濫用して、他人に義務のないことを行わせたり、又は、権利の行使を妨害した場合には、公務員職権濫用罪が適用される。また、裁判、検察もしくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職権を濫用して、人を逮捕又は監禁した場合には、特別公務員職権濫用罪が適用される。更に、これらの者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して、暴行、陵虐等の行為を行えば、特別公務員暴行陵虐罪が適用される。この他、法令により拘禁された者を看守し、又は護送する者がその拘禁された者に対して、暴行、陵虐等の行為を行った場合、これらの者にも特別公務員暴行陵虐罪が適用される。

109.また、刑事手続においては、憲法第38条第2項により、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない」とし、また、刑事訴訟法第319条第1項は、右のような証拠はもとより、その他任意にされたものではない疑いのある自白は証拠とすることができないとして、拷問等の行為が行われることのないように証拠法の面からも保障している。なお、少年審判手続についても、家庭裁判所の裁判官、調査官ともに、特別公務員職権濫用罪及び特別公務員暴行陵虐罪の主体となると考えられている。また、少年には黙秘権があること及び非行事実の認定に当たっては任意性に疑いのある自白は排除されることが少年審判の実務上定着している。

110.この他、矯正施設の被収容者に対しては、公務員による拷問及び残虐な刑罰を禁じている憲法第36条並びに監獄法、少年院法等の法令に基づき、居住環境、衣類及び寝具等の清潔を保つこと、被収容者の体質、健康、年齢等を考慮して必要な食事を給与すること、適正な医療を実施すること等の種々の配慮を行い、人道的な取扱いを実施している。また、矯正施設における被収容者が非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いを受けないことを確保するため、矯正職員に対しては、矯正研修所及び各矯正管区の所在地に設置されているその支所における研修プログラムの中で、被収容者の人道的な取扱いに関する研修を実施している。更に、矯正施設に対する巡閲官等による査察制度が設けられているほか、矯正施設における取扱いに関して、施設の長等との面接、法務大臣への請願制度等を利用し、その是正を求める機会が与えられており、裁判所に対し、施設の長が行った処分の取り消しを請求する司法的な救済を求めることもできることとされている。

V. 家庭環境及び代替的な監護

 

A.父母の指導等(第5条、第18条1)

111.民法第818条第1項にて、成年に達しない子は、父母の親権に服するとされ、また、同法第820条及び第857条において、親権者及び未成年者の後見人は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うとされている。

112.また、我が国憲法第24条は、家族に関する事項に関して両性の本質的平等を規定しているほか、民法第818条は、親権は父母が共同してこれを行う旨定めており、児童の養育及び発達については、父母が共同の責任を有することを原則としている。

113.更に、児童福祉法第1条は「すべての国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない」と規定していることから、父母又は法定保護者は、児童の最善の利益を基本的な関心事項とすることとなっている。

B.父母の責任(第18条1、2)

114.政府は、1991年5月に、「男女共同参画社会の形成」を目指し、「西暦2000年に向けての新国内行動計画(第1次改定)」を策定し、男女平等の理念に基づき、男女が家庭や社会のあらゆる分野に共同参画するための諸施策を推進している。この行動計画の重点目標の主なものとして、「男女の固定的な役割分担意識の是正」、「地域社会及び家庭生活における男女共同参画の促進」を掲げている。前者については、「男は仕事、女は家庭」といった男女の役割を固定的に考える意識の是正、家庭、職場、地域など社会のあらゆる分野での制度や慣習・慣行の見直しを促すための広報、啓発活動を実施している。また、後者については、家事、育児、介護等は、男女の共同責任であり、相互に協力するという認識を浸透させるための広報啓発を行っている。

115.親又は法定保護者が子供に対して行う家庭教育は、子供の人間形成の基礎を培うに当たり重要な役割を担っており、親等が、各家庭において、児童の最善の利益を尊重しつつ、児童の発達段階に応じた適切な対応ができるよう、家庭教育に関する学習を行うことが重要である。このため、政府では、親等の家庭教育に関する学習活動を成人教育の一環として扱い、これらの学習活動を促進・援助するための条件整備を行っている。

(a)家庭教育学級等
116.親及び家庭教育に関心を持つ人々を対象に家庭教育に関する学習機会を提供する事業を行う市町村に、1964年度から助成を行っている。主な学習内容としては、親の態度・役割、家族の人間関係など家庭環境、子供の心身の発達、学校教育との連携など子供を取り巻く社会環境に関することなどが取り上げられている。

(b)父親の家庭教育参加支援事業
117.父親の家庭教育への参加を支援するため、企業等職場内で家庭教育講座を開設する事業を行う市町村に対し、1994年度より助成を行っている。1994年度には全国で41講座が開設された。

(c)家庭教育に関する情報提供等
 

(i)家庭教育充実事業
118.親の子育てに関する不安や悩みの増加、いじめ等の児童の問題行動といった今日の家庭教育の様々な課題に対処するため、総合的な視点から家庭教育の充実方針を推進するもので、家庭教育指導者の養成・確保、家庭教育に関する学習機会のほか、テレビ放送等による情報の提供、電話相談体制の整備等を行う都道府県に対し、1991年度より助成を行っている。1994年度には46都道府県で実施された。

(ii)家庭児童相談
119.また、児童福祉行政の一環として、児童相談所、家庭児童相談室及び児童委員により、児童のいる家庭に対する相談援助活動を行っている。また、「すこやかテレホン事業」、児童センターにおける「子ども家庭相談事業」、保育所における「乳幼児健全育成相談事業」を行っており、1994年度からは、「子どもと家庭の相談事業」として組み替えを行い、家庭児童相談の一層の充実を図っている。

(iii)家庭教育に関する資料の作成・配布等
120.都道府県、市町村等の社会教育関係者が家庭教育学級等の規格・運営をする際の参考に資するため、児童の発達段階別に編集した「現代の家庭教育シリーズ」を作成・配布しているほか、児童を持つ親、これから家庭を築く人々等の参考となる資料として「明日の家庭教育シリーズ」を1994年度以来定期的に刊行している。また、家庭教育について国民各層により幅広い意見の交換を行い、男女の協力による新しい時代の子育てについて考える「フォーラム家庭教育」を1992年度以来毎年開催し、家庭教育機能の活性化に資している。

(iv)家庭教育に関する国際比較調査
121.1994年度の国際家族年を記念して、諸外国の家庭・家族の変化、家庭教育の実態、親の意識等を調査し、現代日本の家庭教育の特色や課題を明らかにするため、日本を含む6ヶ国の比較調査を行った。

122.児童の養育に関しては、児童福祉法、社会福祉事業法、児童手当法、児童扶養手当法、特別児童扶養手当等の支給に関する法律、母子保健法、地域保健法、医療法及び学校教育法により、福祉、医療・保健、教育等の分野でさまざまな援助の提供を行っている(福祉、医療・保健の分野での援助は Ⅵ.及び教育の分野での援助はⅦ.A.参照。)。

C.父母からの分離(第9条)

123.我が国においては、民法第818条第1項により「成年に達しない子は、父母の親権に服する」とともに、同法第821条により「子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない」と規定されていることにより、児童にその父母の意思に従ってその指定した場所に居住する義務が課され、更に法律上根拠がない限り第三者が児童と父母とを分離することはできないこととなっており、児童が父母から分離されないよう確保されている。

124.この条約第9条1にいう「権限のある当局が・・・ 分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合」に関し、我が国においては、保護者の児童虐待等の場合の措置(児童福祉法第28条)として、都道府県により児童の里親、若しくは保護受託者への委託又は児童福祉施設への入所を行う場合(児童福祉法第27条第1項第3号)等があるほか、父母の協議上の離婚及び裁判上の離婚における家庭裁判所による子の親権者又は監護者の指定(民法第819条等)、子の監護者の変更(民法第766号第2項)、親権者の変更(民法第819条第6項)、父母の親権喪失の宣告(民法第834条)がある。

125.父母の意思に反して児童を里親若しくは保護受託者へ委託し、又は児童福祉施設に入所させることについては、児童福祉法に基づき、都道府県が家庭裁判所の承認を得ることが必要であり、その際の手続は、家事審判法及び特別家事審判規則に従って、家庭裁判所によって行われる。その際、現に監護する者及び親権者(親権のないときは後見人)、被保護者の親権者又は後見人の陳述を、それぞれ聴かなければならないとされている(特別家事審判規則第19条第1項)ほか、満15歳以上の子の陳述も聴かなければならないとされている(同規則第19条第2項)。 

126.また、子の親権者又は監護者の指定・変更及び親権喪失宣告についても、民法、家事審判法及び家事審判規則に従って、家庭裁判所で行われる。その際、家事審判規則では、利害関係人からの任意の参加を規定しており(家事審判規則第14条及び第131条)、事件に関して利害関係を有すると認められた者は、家庭裁判所の許可を受けて各手続に参加することができることとなっている。更に、家庭裁判所が親権者の指定・変更や子の監護者の指定等の審判を行う場合に、子が満15歳以上であるときは、家事審判規則により、その子の陳述を聴かなければならないとされている(家事審判規則第54条及び第 70条)。

127.なお、上記の場合の15歳未満の児童の陳述聴取については、いずれの場合も明文の規定はないが、家庭裁判所は、職権により(家事審判規則第7条)、家裁調査官に調査を命じるなど適切な方法により児童の意見を聴取しており、また、児童が任意に意見表明する場合はこれを妨げることはない。

父母の一方又は双方から分離されている児童の父母との人的な関係等の維持の権利

128.この条約第9条3に関し、父母の一方又は双方から分離されている児童とは、具体的には父母の一方若しくは双方又は児童自身が少年院、少年鑑別所、監獄、入国者収容所、精神病院等に収容され又は入所している児童を指すと考えられる。各施設については、各関係法令により次のように規定されており、これらの規定に基づいた措置がとられている。
 

(i)少年院においては、面会、通信、小包の発受は矯正教育に害があると認める場合を除き、許可しなければならないとされている(少年院処遇規則第52条、第55条)。

(ii)少年鑑別所における面会については近親者、保護者の他、附添人その他必要と認める者につき許すとされ、また、通信の発受も規律に反しない限り許すとされている(少年鑑別所処遇規則第38条、第40条)。

(iii)監獄においては、在監者とその親族との接見及び信書の発受を許すとされている(監獄法第45条、第46条)。

(iv)入国者収容所においては、収容所(又は収容場)の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられており(出入国管理及び難民認定法第61条7)、面会、信書の発受等も基本的に認められている(被収容者処遇規則第34条、第37条)。

(v)精神病院においては通信、面会ともに原則自由である(精神保健法及び精神障害者福祉に関する法律第37条、1988年厚生省告示第130号)。

129.この条約第9条4に規定する家族の不在になっている者の所在に関する重要な情報の提供については、次のような措置をとっている。

(i)矯正施設に収容されている者の所在については、本人から親族あてに信書を発送させることにより、その所在について親族に連絡させており、字が書けない者については、職員が代筆する等の配慮をしているほか、少年院及び少年鑑別所においては、入所(院)通知及び移送通知を送付することにより、その所在を遅滞なく親族に連絡している。

(ii)矯正施設に収容されている者が死亡した場合には、電話等適当な方法で病名、死因及び死亡日等をその近親者に速やかに通知している。

(iii)入管法上の収容施設における特定の外国人の収容事実について、その家族から照会があったときは、調査の上、その事実の有無について回答している。

(iv)外国人が入管法上の収容施設に収容されている間に死亡したときは、死亡の日時、病名、死因等を速やかにその親族又は同居者等に通知することとしている。

(v)外国人の退去強制に関しては、特定の外国人について、その家族から退去強制事実について照会があった時は、調査の結果該当者が確認された場合、送還先、送還日時、航空機便名などを回答している。

D.家族の再統合(第10条)

130.我が国では、憲法第22条第2項が外国移住の自由を規定していることから、日本人の出国の自由は保障されている。自国に戻る権利は、憲法に明文の規定はないが、当然に保障されていると解されている。なお、出入国管理及び難民認定法では、日本人の出国及び帰国について、出国及び帰国に際しての確認の手続を規定しているにとどまり(同法第60条、第61条)、出国及び帰国を制限している規定は存しない。また、外国人の我が国からの出国については、出入国管理及び難民認定法に従って、入国審査官から出国の確認を受けることを条件としているにとどまっており(同法第25条)、外国人児童及びその父母についても日本から出国する権利は尊重されている。

131.出入国の申請についても、出入国管理及び難民認定法に基づき、この条約第10条1の規定に従った適切な方法で取り扱っている。

132.ただし、我が国では、旅券法第13条第1項各号において、犯罪にかかわっている者、日本の利益又は公安を害するおそれがある者など一般旅券の発給を制限する場合が定められているほか、出入国管理及び難民認定法第25条の2には、重大な犯罪について訴追され又は逮捕状等が発せられている外国人の出国の確認を一時留保することができる旨定められているが、これらは必要最小限のものであり、この条約10条2の規定に合致するものである。

133.なお、政府では、東京、大阪及び名古屋の入国管理局並びに横浜の入国管理局支局内に、外国人及びその在日関係者のために、「外国人在留総合インフォメーションセンター(Immigration Information Center)」を開設し、外国語を解する専従の専門相談員が、土曜・日曜・祝日等を除く毎日、外国人の入国や在留等に関する面接又は電話による問い合わせに応じており、また、インフォメーションセンターが開設されていない他の入国管理局においても外国人の入国在留等に関する相談窓口を設けている。このように、家族の再統合のための情報提供等にも努めている。

E.児童の扶養料の回収(第27条4)

134.我が国においては、次のような制度が保障されている。

(a)児童の父母又は金銭上の責任を有する者が我が国にいて、児童が我が国において扶養料を回収する場合

135.児童の扶養料は、(i)婚姻中における婚姻費用の分担、(ii)離婚時の子の監護費用の分担、(iii)親の子に対する扶養義務の履行として請求することができる。
 具体的な回収の方法としては、家事審判法に基づく(i)これらに関する調停と、(ii)婚姻費用分担に関する審判事件における請求、(iii)子の監護に関する審判事件における扶養料請求、(iv)扶養に関する審判事件における扶養料請求のほか、(v)人事訴訟手続法第15条1項による離婚訴訟の際の付帯申立てが用意されている。前記(v)の離婚訴訟における付帯申立てを認容する判決はもとより、これらの給付を命ずる調停調書及び審判書は、執行力ある債務名義と同一の効力を有しているので、義務者が任意に履行しない場合は、強制執行をして扶養料を回収することが可能である。家事審判法は、上記の強制執行の方法に加え、家事債務の履行を確保するための履行確保の制度を設けており、家庭裁判所は、調停又は審判で定められた義務につき、履行勧告又は履行命令をすることができる。なお、1994年の1年間に終局した家事に関する金銭債務の履行勧告事件は、9,610件であり、このうち、全部又は一部が履行されたものは、6,411件である。更に、扶養料の支払いにつき合意が成立している場合には、この扶養契約の履行を訴訟により求めることができる。

(b)児童の父母又は金銭上の責任を有する者が児童と異なる国に居住しており、児童が我が国において扶養料を回収する場合

136. 扶養に関する審判事件は、相手方の住所地の家庭裁判所の管轄とすることとなっている(家事審判規則第94条第1項)ので、児童は、扶養に関する調停・審判を、父母等の我が国における最後の住所地に申し立てることができる。また、最後の住所がないか又は知れないときは、我が国における財産の所在地又は最高裁判所の指定した地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができる。更に、扶養料の支払いにつき、父母等との間で合意がある場合においては、父母等の我が国における最後の住所地、我が国における扶養契約の義務履行地、我が国における父母等の差し押さえることのできる財産がある場合には、その財産の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に扶養契約の履行を求めて訴えを提起することができる。
 児童は、我が国の裁判所において、扶養料の支払いに関する判決又は決定を得た後は、我が国に父母等の財産がある場合には、判決又は決定に基づき、その財産に対し強制執行をすることができる。

137.なお、我が国は、扶養義務に関して、1977年7月22日、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約を、更に、1986年6月5日、扶養義務の準拠法に関する条約を締結している。

F.家庭環境を奪われた児童(第20条)

138.児童福祉法に基づき、保護者のない児童、又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童については、児童相談所において一時保護を行うとともに、必要に応じて、乳児院、養護施設へ入所させる等の措置をとることができる。また、この他に、児童福祉法に基づき、里親への委託の制度も設けている。

(a)乳児院

139.乳児院は、保護を要する乳児(1歳未満)を入院させて養育することを目的とする施設である。乳児院では、乳児が、一般に疾病に対する抵抗力が弱いため、施設の運営面で、医学的管理が十分なされるように配慮されている。また、職員についても、医師及び看護婦が配置され、その健康管理に特に配慮がなされている。1995年3月1日現在における乳児院は、施設数117ヶ所、入所定員 3,831人、在籍乳児数2,752人となっている。

(b)養護施設

140.養護施設は、乳児を除いて保護者のない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて養護することを目的とする施設である。最近の傾向としては、保護者があっても適切な監護が受けられない児童の入所が増加しており、父母の行方不明、父母の離別、父母の長期疾病、父母からの放任、虐待等による入所が目立っている(資料6参照)。

(資料6:養護施設における養護問題発生理由別入所児童の構成割合)
                          (単位:%)

(注)両親とは、父母いずれか一方の場合も含む    (厚生省調べ)

(資料7:養護施設数)

  1995年3月1日現在   施設数529ヶ所(公営69ヶ所、私営460ヶ所)
  入所定員33,406人(公営4,492人、私営28,914人)
   在籍人員26,929人(公営2,954人、私営23,975人)

 

(c)里親

141.里親とは、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を自分の家庭に預かって養育することを希望する者であって、都道府県知事が認めた者をいう。毎年、里親を求める全国的な運動等が実施され、その普及推進に努力が払われているが、養子縁組との混同から、児童の保護者が里親委託を望まないこと、里親となることが特別の篤志家のように考えられ、社会全般の関心が低いことなどにより、里親数、委託児童数とも漸減傾向にある(資料8参照)。

(資料8:里親数及び委託児童数の年次推移)   (単位:人)

                       (厚生省調べ)

このような現状を踏まえ、1987年度以降、従来の特別な篤志家に里親になってもらうという理念から、広く里親を求め、普通の人を立派な里親に育てていくという新しい理念に改め、里親制度の発展を図っているところである。

G.養子縁組(第21条)

142.我が国の養子縁組としては、民法において普通養子縁組と特別養子縁組の双方が定められている。

(a)普通養子縁組

143.普通養子縁組は、養親と養子との間に嫡出子としての法定親子関係を生ぜしめる行為であるが、養子となるべき者が未成年者であるときは、後述の例外に当たる場合を除き、原則として家庭裁判所の許可が縁組成立の要件となっており、また、養子縁組は、届出の受理により効力が発生する。なお、普通養子縁組については、協議による離縁(民法第811条)、裁判による離縁(同法第814条)及び親権喪失の宣告(同法第834条)に基づく事後救済が可能となっている。家庭裁判所は、養子縁組が未成年者の福祉に合致するかどうかという基準により判断している。

144.なお、普通養子縁組において、自己又は配偶者の直系卑属である未成年者を養子とする場合は、家庭裁判所の許可が必要とされていないが、この場合は定型的に児童の福祉が害されるおそれがないため、家庭裁判所による判断は必要としないこととされている。ただし、この場合であっても、養子縁組の届出を受理する際に戸籍事務管掌者が、例えば15歳未満の子を養子とする場合には、法定代理人の承諾があるか、他の法令に違反していないか、当該縁組が自己又は配偶者の未成年の直系卑属の養子縁組に当たるかどうか等の要件の存在をすべて審査した上で認定することとなっている。

(b)特別養子縁組

145.特別養子縁組は、養親と養子の合意ではなく、養親となる者の請求に基づき、家庭裁判所の審判によって成立することとされており、子となる者は原則として請求時に6歳未満の者に限り、特別養子縁組によって、養子と実方の父母及びその血族との親族関係が終了する。このことから、特別養子縁組の成立には、実父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であること等の事情があって、子の利益のために特に必要あると認められることを要し、また、父母が意思を表示することができない場合又は父母による虐待等、養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合を除いては、実父母の同意が要件とされる。なお、特別養子縁組についても、親権喪失の宣告(民法第834条)に基づく事後救済は可能であるが、離縁は原則としてすることができず、養親による虐待その他養子の利益を著しく害する事由があり、かつ、実父母が相当の監護をすることができる場合で、養子の利益のために特に必要があると認めるときに、家庭裁判所が、養子、実父母又は検察官の請求により、縁組の当事者を離縁させる審判を行うことができるのみである(同法第 817条の10)。

(c)国際養子縁組

146.我が国は、日本人が外国人を養子とすること及び外国人が日本人を養子とすることのいずれもが認められている。

(i)日本人が外国人を養子とする場合

147.養子縁組の実質的成立要件については、我が国の法律(民法)が準拠法となり、外国人養子の本国法が養子を保護するための要件(養子若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公の機関の許可その他の処分)を定めているときは、その要件も満たす必要がある(法例第20条第1項)。形式的成立要件(方式)については、我が国の法律が準拠法(法例第22条)になるので、普通養子の場合は、戸籍法所定の手続により、実質的成立要件が満たされることを証明する書面を添付して届出をし、受理されることにより縁組が成立し、特別養子の場合は、家庭裁判所の審判により縁組が成立した後これを届け出ることになる。

(ii)外国人が日本人を養子とする場合

148.養子縁組の実質的成立要件については、外国人の養親の本国法が準拠法になるが、我が国の民法の規定する養子保護のための要件をも満たす必要がある(法例第20条第1項)。形式的成立要件(方式)については、養子縁組の成立を定める法律又は我が国の法律(行為地法)が準拠法になるが(法例第22条)、我が国の法律によるときは、上記(i)と同様、戸籍法所定の手続をとることになる。

149.我が国は、刑法が、営利目的の略取・誘拐、国外へ移送することを目的とする略取・誘拐又は人身売買、被拐取者の国外への移送、更にこれらの未遂を処罰する旨規定し、日本国民が国外においてこのような罪を犯した場合も処罰の対象として、国際的な養子縁組において関係者に不当な金銭上の利益をもたらすことのないようにしている。また、児童福祉法は、成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として児童の養育を斡旋する行為を禁止し、これに違反した者を処罰する旨規定している。このほか、家庭裁判所が、未成年者の養子縁組が人身売買であることを確認した場合には、子の福祉に反することが明らかなので、当該養子縁組の許可をしないこととなる。

H.不法な移送及び不帰還(第11条)

150.刑法において、未成年者の略取・誘拐、国外へ移送することを目的とする略取・誘拐又は人身売買、被拐取者の国外移送並びにこれらの未遂を処罰することとしている(刑法第224条、第226条第1項、第2項)ほか、児童福祉法第34条第1項第7号は、児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなす虞がある者に、情を知って、児童を引き渡す行為及び当該引き渡し行為のなされる虞があるの情を知って、他人に児童を引き渡す行為を禁止し、これに違反した者を処罰することとしている。

I.虐待及び放置(第19条)

虐待等からの児童の保護

151.児童を虐待等から保護するために、次のような措置がとられている。
 児童福祉法に基づき、児童虐待の場合等、保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者は、児童相談所へ通告しなければならないこととなっている。児童相談所では、児童福祉法に基づき、保護者たる親権者又は後見人が児童を虐待し、著しく監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しくその児童の福祉を害する場合において、その児童を乳児院、養護施設に入所させる等の措置をとることができる。また、都道府県知事は、事後措置として施設長等に対し、児童の保護について、必要な指示をし、又は必要な報告をさせることができることとされている。なお、施設への入所措置等をとることが保護者の意に反する場合は、家庭裁判所の承認を得た上でかかる措置をとることができるとされている。我が国は、民法の規定により、親権の濫用等があった場合には家庭裁判所が親権の喪失を宣告することができ(児童相談所長も親権喪失の宣告の請求を行うことができる)、また、後見人に不正な行為等があった場合には家庭裁判所が後見人を解任することができることとなっている。

152.法務省の人権擁護機関では、児童が暴力、虐待等を受け、その人権を侵害されている疑いを認知した場合、人権侵犯事件として調査を開始する。そして、人権侵犯の事実が認められた場合は、関係者に対する説得活動によって、自ら人権侵犯の非を悟らせ、それによって、現存する人権侵犯を排除するとともに、将来の再発を防いでいる。また、必要な場合には、児童相談所等関係機関へ通報し、連携して児童の保護に取り組んでいる。1995年における人権侵犯事件数16,296件のうち、親の子に対する酷使虐待は615件、強制圧迫は356件であった。

153.警察では、少年の非行防止又は少年の福祉を図るための活動の一つとして、少年又は保護者その他関係者から少年相談を受けている。 1995年中は、児童虐待に関し178件の少年相談を受理している。この少年相談又は他の警察活動により把握した児童虐待については、事件化による解決を図っているほか、事件化できない場合においても、その児童を保護者に監護させることが不適当であると認められる場合には、速やかに児童相談所に通告し、その委託を受けて一時保護を行うなど、関係機関との連携による虐待児童等の保護に努めている。

児童の虐待等の防止

154.近年、我が国においては、都市化、核家族化の進行等によって、家庭をとりまく環境が変化し、その結果、家庭の養育機能の弱化など複雑な問題が生じている。児童相談所に相談のあった父母等による児童の虐待等の事例も、1990年には1,001件であったのが、1994年度は1,961 件と急激に増加している。児童の虐待の発生要因の1つとして、家庭を取り巻く環境の変化に伴い家庭における子育てが孤立化し、子育てに当たる親が不安感なりストレスを持つということがあげられる。このような状況に鑑み、児童の虐待の防止のための効果的な手続として、主なものとして以下のような措置がとられている。

(a)児童相談所(1995年度現在、175ヶ所)

155.都道府県に児童相談所の設置が義務づけられており、児童相談所は、児童に関する各般の問題につき、家庭その他からの相談に応じているほか、実際に児童相談所に訪問できない場合でも、電話相談、児童家庭専門家チームによる高度な援助活動の展開を中心とする「子ども・家庭100番」等を実施し、巡回相談、家庭支援電話相談等を行っている。

(b)家庭児童相談室(1994年度現在、1,044ヶ所)

156.住民にとって身近な福祉行政機関である福祉事務所に設置されたもので、家庭相談員及び社会福祉主事が配置され、一般家庭における児童の育成上の種々の問題について相談指導を行い、問題を持つ児童等の早期発見、早期指導に努めている。

(c)児童委員(1994年度現在約21万人)

157.市町村の区域に置かれており、児童について、常にその生活及び環境の状態を把握し、その保護、保健その他福祉に関し援助活動を行っている。

158.しかし、上記のとおり、虐待の件数は増加傾向にあり、従来、むしろ家庭の私的な領域の問題という形でとらえられてきた児童の虐待は、昨今、一般の家庭の問題として社会問題化し始めている。政府では、一層の強化策として、都市家庭在宅支援事業(17.参照)や児童虐待ケースマネージメント事業(18.参照)を新たに導入した。今後は、虐待等の防止に向け、このような各種措置の充実を図っていくとともに、虐待防止の啓発活動についても一層促進させていくことが重要である。 

虐待等を受けた児童の回復及び社会復帰

159.我が国は、児童福祉法に基づき、児童相談所において、児童福祉施設や家庭復帰に至るまでの間一時保護等の対応を行っている。児童相談所には、一時保護に携わる児童相談所長、児童福祉司、心理判定員等が置かれている。これらの者が、個々の児童及び家庭の状況に応じて、乳児院、養護施設への入所措置等をとり、虐待等からの保護を図っている。

J.収容に対する定期的な審査(第25条)

160.児童の身体又は精神の養護、保護又は治療を目的として児童を収容する主な施設としては、乳児院、養護施設、精神薄弱児施設、盲ろうあ児施設、虚弱児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設、教護院といった児童福祉施設がある。これらの児童福祉施設については、児童福祉法第46条により、最低基準を維持するための行政庁の質問検査権が定められており、この規定に基づき、児童福祉施設施行令第12条の2により、都道府県知事が概ね6ヶ