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日本政府第2回報告
(日本語仮訳

平成13年11月
日本国

 

序論

 児童は、人として尊ばれる
 児童は、社会の一員として重んぜられる
 児童は、よい環境の中で育てられる

(児童憲章より)

1.1999年10月現在、我が国の児童(18歳未満の人口)数は、2,326万人(総人口比18.4%)、児童のいる世帯は、1,317.2万世帯(総世帯比29.3%)であり、1991年12月の「西暦2000年に向けての国内行動計画」作成時に比べ(総人口比23.06%、総世帯比38.5%)、少子化が着実に進行しており大きな問題となっている。
 我が国は、かかる少子化傾向に歯止めをかけるべく新たな施策を講じており、今後もかかる施策の継続に努めていく。

2.我が国は、特に第2次世界大戦後、福祉面及び教育面における諸施策の拡充・発展に努めており、いずれも高い水準の実績を上げている。
 今後もこれを継続していくことにより、総合的な児童・家庭福祉施策の充実及び基礎教育の普及に努めていく。

3.他方、近年、我が国では社会の高度化、複雑化により、児童や家庭を取り巻く環境は大きく変化しており、児童買春・児童ポルノ、いじめ、非行、自殺、薬物乱用、児童虐待などの新しい問題が深刻化している。
 我が国としては、かかる問題への早急かつ効果的な対応が求められているところである。

4.児童の人権問題への対応にあたっては、政府に加えて個人やNGO等の市民社会が重要な役割を担うと考える。今後、我が国が、人権分野で重要な国際的責任を果たしていくためには、政府とこうした市民社会が相互の信頼関係に基づき、建設的に協力し合い、それぞれの役割を果たすことが不可欠と考える。

5.我が国は、1994年4月22日、児童の権利に関する条約を批准し、1996年5月、条約第44条1に基づき第1回政府報告書を提出した。
 本件条約批准後7年を経過し、我が国は、児童を取り巻く新たな社会問題に対応した政府の諸施策及び1998年6月に出された児童の権利委員会よりの最終見解への政府の対応等を盛り込んだ第2回政府報告書をここに提出するものである。

I.条約の諸規定の実施のための一般的措置

 

A.留保の見直し

1.我が国は、委員会より、1996年5月提出の第1回報告を受けて出された最終見解で、1993年6月に開催された世界人権会議で採択された「ウィーン宣言及び行動計画」に照らし、第37条(c)に対する留保及び解釈宣言を撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励する旨勧告を受けた。

2.我が国は、1993年6月に開催された世界人権会議の約1年後の1994年4月に、児童の権利に関する条約を批准した。その際、第 37条(c)に関し留保を付し、第9条1及び第10条1に関し解釈宣言を行った。今回の第2回報告の提出に当たり、我が国としては、第1回政府報告パラグラフ13及び第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答1.に基づき、留保及び解釈宣言を現在のところ撤回することは考えていない。

B.国内法及び国内実施と条約の諸規定を調和させるためにとられた措置(第4条)

3.第1回政府報告パラグラフ12参照。

 

4.1997年6月、「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立したが、その起草過程においては、条約の規定との整合性を確保するとともに、児童の最善の利益の確保、児童の意見表明権等条約の趣旨がより一層効果的に反映されるよう十分な考慮が払われた。
 また、1999年5月18日、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」を制定し、同年11月1日から施行している。また、2000年5月17日、「児童虐待防止等に関する法律」を制定し、同年11月20日から施行しており、児童に対する商業的性的搾取及び児童虐待からの児童の権利保護や健全育成に努めて、条約の一層効果的な実現を図っている。
 更に、2001年2月、児童買春、児童ポルノ等の児童の商業的性的搾取の予防やこうした行為の取締、被害児童の回復のための取組等を定めた「児童の商業的性的搾取に対する国内行動計画」を策定した。

5.我が国は、条約の国内外における更に効果的な実現に貢献するため、2001年12月、横浜にて「第2回児童の商業的・性的搾取に反対する世界会議」を開催することとしている。本会議は、各国政府、関連国際機関及びNGO等1300名から2000名の出席者を想定しており、インターネット利用のものを含む児童ポルノ、児童の性的搾取からの予防・保護及び回復、児童のトラフィッキング等を主要のテーマとして開催するものである。本件会合も条約の効果的な実現に資するものである。

C.条約の国内法体系の中での地位

憲法又は法律で挙げられる権利認定

6.第1回政府報告パラグラフ2、3参照。

条約と法律との関係

7.第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答2.参照。

裁判での条約の直接適用

8.条約の規定を直接適用し得るか否かについては、これまで児童の権利条約を直接適用しうるか否かを明示的に判示した裁判例はないが、政府としては、当該規定の目的、内容及び文言等を勘案し、具体的場合に応じて判断すべきものと考えている。

D.条約と国内法及び他の国際法との関係(第41条)

9.第1回政府報告パラグラフ4から8参照。
 「児童福祉法等の一部を改正する法律」等については、パラグラフ4.のとおり。

E.条約の原則及び規定が司法決定の際に適用された例

10.法令等について児童の権利条約違反が当事者から主張された裁判例はいくつかあるが、児童の権利条約に違反する旨の判断を示した判例はこれまでのところない。

11.児童の権利条約に関する判例としては以下のようなものがある。
 性的表現を有するコンピューターソフトを含むフロッピーディスクに関して、県知事が一定の図書等を有害図書として指定するなどし、有害図書類については、青少年に対する販売等が許されない旨を定めた条例が、憲法、児童の権利条約等に違反するか否か争われた例。(判決は、同条約が、未成熟な青少年の健全な育成に有害である図書類を全く無視して、青少年にあらゆる情報を受ける自由を保障することまで規定したものではなく、また、それを全て親権者等に委ね、如何なる事態に至ろうとも締約国が規制することを禁止したものと解釈することはできないことは明らかであり、更に同条約13条2項但書にいう「法律」は国会により制定される法律のみを指すものではなく、法律の範囲内において地方自治体の議会により制定される条例も含まれるので、本件条例は同条約に反しないとしている。)(1995年、福岡高裁宮崎支部)

F.条約で認められた児童の権利が侵害された場合の救済措置

(a)子どもの人権専門委員

12.第1回政府報告パラグラフ15及び第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答7.のとおり、我が国は、児童の人権を保障する行政上の措置の一つとして「子どもの人権専門委員」を設置している。「子どもの人権専門委員」の主要な活動内容は、(イ)子どもの人権に関する情報の収集と整理、(ロ)子どもの人権侵犯事件の調査・処理及び人権相談、(ハ)子どもの人権を守るための啓発活動の企画・立案であり、具体的な活動として、「子どもの人権相談所」や「子どもの人権110番」を通じて、子どもの人権相談に応じ、また、子ども会等との連携による座談会を実施したり、子どもの人権意識についてのアンケート調査を実施するとともに、子どもの人権が侵害されているおそれがある場合には、法務局・地方法務局と連携して適切に対処している。

13.2001年度における「子どもの人権専門委員活動経費」は、14,449千円が措置されており、その内訳は、子どもの人権相談所や研修会などに出席する旅費として、12,605千円、執務参考図書を購入するための経費として、1,844千円となっている。
 なお、現在、「子どもの人権専門委員」は全国に688名配置されている。

14.「子どもの人権専門委員」は、人権擁護委員の中から人権擁護局長が指名するものであるが、人権擁護委員は次のような民主的で慎重な手続により選出される。

(1)市区町村長は、法務大臣に対し、市区町村議会の意見を聞いて、当該市区町村の議会の議員の選挙権を有する住民で人格識見が高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護について深い理解がある人の中から、候補者を推薦する。

(2)法務大臣は、上記候補者について、更に弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会に意見を求めた上、委嘱する。

15.委員の活動実績としては、前記「子どもの人権相談所」、「子ども人権110番」における人権相談の実施及びいじめ防止カード等の作成・配布による子どもの人権侵害の監視活動並びに子どもの人権侵犯事件における調査・救済活動の実施、機関紙発行及びマスメディアを通じての人権啓発活動、教育委員会等関係諸機関との連携による人権啓発活動の実施等が挙げられる。

(b)人権擁護委員

16.第1回政府報告パラグラフ16参照。

G.児童の権利実現のための国内行動計画等条約の枠組みの下での児童に係る包括的な国家戦略の策定

 

17.我が国は、1990年9月に開催された「子供のための世界サミット」において採択された「世界宣言を実施するための行動計画」パラ34(a)に基づき、1991年12月に国内行動計画を作成した。その後、ブトロス・ガーリ国連事務総長(当時)の要請を契機とし、1996年7月に中間レビューを行った他、第4回東アジア・太平洋地域子供サミットに関する大臣会合("Fourth East Asia and Pacific Ministerial Consultation on Goals for Children and Development Towerd the Year 2000")の際、1998年10月に中 間レビューを行った。
 更に、我が国は、2001年9月の「子供のための世界サミット」フォローアップ特別総会開催に向け、「子供のための世界サミット」以降の我が国の取り組みにつきレビューすることを目的として国別報告書を作成した。

18.我が国は、パラグラフ5.のとおり、本年12月に「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」を開催することとしている。これに先立ち、1996年8月にストックホルムにて開催された「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」において、児童ポルノ、児童買春や児童の商業的性的搾取を目的とした児童の売買といった商業的な児童の性的搾取の撲滅に向けた「宣言」及び「行動計画」が採択され、各国は児童の商業的性的搾取への取組を定める「国内行動計画」を策定するものとされた。我が国は、これに基づき、「児童の商業的性的搾取に対する国内行動計画」を策定した。

H.児童の権利条約実施等のための国内機構

(a)児童の権利条約の各分野の所轄官庁及びその活動調整、進捗の監視

19.第1回政府報告書パラグラフ26から29のとおり、児童に関する施策は、福祉、教育等を含め幅広い分野にわたっており、関係する行政機関は多数に及んでいる。我が国は、青少年に関する施策を政府全体として総合的かつ効果的に実施するために、旧総務庁においては関係省庁の局長クラスで構成する青少年対策推進会議等を通じて関係省庁の施策の総合調整を行ってきたところであり、特に1998年7月24日には、本会議の構成員に旧総理府、旧経済企画庁、旧大蔵省、旧国税庁、旧通商産業省の関係局長等を新たに加え、同会議の下に置かれている関係省庁連絡会議についても、構成員の追加を行った。さらに政府の青少年対策の基本的な方針、重点的に推進する事項等を定めた「青少年対策推進要綱」を改正し、「基本方針」に児童の権利に関する条約との関連を明示するなど青少年問題に関する全政府的な取組体制の確立を図った。
 2001年1月の中央省庁等改革以後は、内閣府が青少年育成推進会議等を通じて引き続き関係省庁の緊密な連絡を図りつつ総合調整を行っている。

 このように、児童に関する施策については、各種施策の展開を通じて総合的かつ効果的に実施してきており、現在、当該施策を調整する制度を新たに政府部内に創設する予定はないが、引き続き現行の制度の下で、関係行政機関の緊密な連絡を図りつつ、児童に関する施策を総合的に推進していく予定である。

20.青少年の健全育成・非行防止に当たっては、児童の権利に関する条約の趣旨、児童の権利委員会からの最終見解にも留意しながら、各種施策を総合的に推進する。

21.条約履行を実質的に監視するためのメカニズムについては、第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答6.参照。

(b)中央当局と地方当局の間の調整

22.地方との関係について、第1回政府報告パラグラフ27のとおり、内閣府において、都道府県、政令指定市の青少年関係主管部局との連絡会議を開催し、国、地方相互の情報交換を行うなど、青少年に関する施策につき国と地方を通じた総合的推進に努めている。

23.我が国の地方公共団体では、この条約の締結を契機に、この条約の広報や児童の福祉施策の充実等条約に資する各種施策が新たに展開されている他、条約の趣旨に従い児童参加型の社会作りの促進を図るために子供議会を開催する等、児童の人権の尊重の一層の促進に向けた施策が積極的に行われているものと承知している。

24.各地方公共団体は、その地域の実情に応じて条約の実施に向けた施策に努めているものと承知しているが、その結果、地域間で実施の程度に多少格差があることも否めない。そこで、政府としては、引き続き地方公共団体の関係部局に対する助言又は中央行政機関の下部組織等に対する指導・助言の他、地方との連絡会議等を通じて、地方公共団体において等しく取り組むべき施策の地域間格差をなくすべく適切に調整を図っていきたい。

(c)児童の権利推進等のための政府機関及び当該機関とNGOとの関係

25.児童の権利については、それぞれの省庁が実施している各種施策の展開を通じて保障されているところであり、その実施の責任及び評価については、それぞれの省庁が負っている。

26.青少年相談機関について、第1回政府報告パラグラフ28参照。

 

27.政府としては、条約を効果的に実施するためには、政府のみならず、社会全体として取り組んでいくことが重要であると認識しており、民間において行われている児童の権利の尊重及び保護の促進を目的とした様々な活動は、条約の実施に資するものであり、その重要性を十分認識しているところである。
 かかる観点から、政府としては、民間団体の専門性を活用しつつ条約を実施するよう努めている。民間団体を協力して実施した例としては、次のようなものがある。

(1)条約の実施に際して、政府とNGOとの対話を随時行っている。本報告書作成に際しても、児童の権利条約に関する政府の取組に関心を有するNGO等から、広く意見を聴き、必要かつ適当と判断される場合にはこれを報告書に適宜反映させることを目的として、外務省の主催によりNGO等との意見交換会を2回に亘り開催した。

(2)子どもの人権専門委員が、子どもの人権に関する情報収集と整理及び子どもの人権を守るための啓発活動の企画、実施を行うにあたり、地域の実情に応じ、学校、児童相談所の他、地域、PTA、民生委員等と連携を図っている。

(3)児童に対する虐待を早期に発見・対応する機関として児童相談所があり、関係機関、民間虐待防止団体と連携をとるよう都道府県知事等に通知している。
 児童虐待の早期発見・早期対応を図るためには、福祉、保健、警察、教育、司法などの関係機関の有機的な連携が重要であることから、国の関係府省等と全国レベルでの関係20団体により構成される「児童虐待対策協議会」を設置している。
 また、すべての都道府県・指定都市においても児童虐待に関係する機関のネットワークが設けられており、さらに、住民に身近な市町村における連携を推進するため、「市町村虐待防止協議会」の設置を推進している。

(4)児童を性的虐待及び性的搾取から保護するため、財団法人ユニセフ協会と協力の上、児童買春の根絶を訴える啓発活動を行っている。本年12月に開催される「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」の準備に際しても、右協会及び関係団体との協力を図っている。

(5)開発途上国における教育及び母子保健等の児童の福祉に資する事業に従事する民間団体の活動に対し、草の根無償資金協力及びNGO事業補助金制度を通じて、財政的支援を行っている。

(d)オンブズマン等、児童の権利擁護のための独立した機関

28.前述のとおり、児童の権利については、それぞれの省庁が実施している各種施策の展開を通じて保障されているところであり、その実施の責任及び評価については、それぞれの省庁が負っており、また、政府としては、条約を効果的に実施するためには、政府のみならず、社会全体として取り組んでいくことが重要であると認識しており、民間において行われている児童の権利の尊重及び保護の促進を目的とした様々な活動は、条約の実施に資するものであり、その重要性を十分認識しているところである。
 これに基づき、政府としては、関係行政機関相互間の緊密な連絡、民間団体との協力に努めてきたところであり、児童オンブズマンを創設する予定はないが、引き続き現行の制度の下で条約の履行を促進していきたいと考えている。

(e)統計の収集・整備等

 

29.第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答5.参照。

(f)条約の実施状況の定期的評価

30.条約の実施状況を定期的に評価するための措置はとっていないが、前述のとおり、児童の権利については、それぞれの省庁が実施している各種施策の展開を通じて保障されているところであり、その実施の責任及び評価等は、それぞれの省庁が負っている。
 政府としては、これまでも児童の健全な育成を目的とした各種施策の展開を通じて児童の権利の保障を行ってきたところであり、引き続き現行制度の下で、関係行政機関の緊密な連絡を保ちつつ、条約の趣旨を踏まえた施策を総合的に推進していきたい。

I.NGO等の市民社会と協力してとられたイニシアティブ

31.パラグラフ27.のとおり、市民社会と協力して条約の実施に努めているところである。

J.利用可能な手段の最大限の範囲内でとられた児童の経済的、社会的、文化的権利を実現するための措置

児童のための社会的支出に向けられた予算

32.2000年度の我が国政府の一般会計予算(国債費を除く。当初予算ベース)は63兆218億円であり、この8.4%を占める約5兆2,688億円が青少年対策関係予算に割り当てられており、この条約に掲げられている児童の権利の実現に必要な資源が適正に配分されていると考えられている。
 このうち、健康関係分野では、健康増進及びスポーツ普及振興、母子保健対策のために約175億円が、教育関係分野では、学習活動の奨励、家庭教育の振興、学校教育関連施策、青少年の職業訓練等のために約3兆4,983億円が、社会サービス分野では、保育対策、母子福祉対策、心身障害児対策、児童手当、児童福祉施設整備等のために約7,283億円がそれぞれ割り当てられている。
 なお、以上の予算額は、児童を含む青少年の育成に直接的あるいは間接的に関わるものとしてまとめた予算である。また、その中には、全ての年齢者を対象としており青少年に関する予算部分を切り分けることが困難な予算を含んでいる。
 地方公共団体の予算内訳の詳細については、政府としてその全てを把握してはいないが、より現場に近い地方公共団体においても中央省庁における予算措置と同様、児童の権利条約第4条の趣旨に鑑み、児童のために利用可能な最大限の資源配分がなされているものと承知している。

児童関連予算の動向

33.内閣府が取りまとめている前述の「青少年対策関係予算」の動向は下表のとおりである。

 

(資料)青少年対策関係予算
年度 予算額(当初予算)(千円) 青少年対策関係予算(千円) 割合(%)
1996 58,729,726,369 5,155,480,507 8.8
1997 60,587,675,115 5,218,009,563 8.6
1998 60,406,363,032 5,177,290,727 8.6
1999 62,028,199,364 5,216,162,314 8.4
2000 63,021,711,948 5,268,780,743 8.4

*国債費を除く。
*1996年度「青少年対策関係予算」は特別会計を含む。

 

予算決定における「児童の最善の利益」への考慮

 

34.近年我が国で進行している少子化が、子どもの健全な成長へ悪影響を与えること等に鑑み、2000年度からの5カ年計画である「新エンゼルプラン」を策定した。
 新エンゼルプランは、保育サービス等子育て支援サービスの充実や仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備など少子化対策の具体的実施計画として策定されたものであり、このプランに基づき、保育サービスの充実や放課後児童クラブの推進など、児童と家庭関連に重点的な予算配分を行っている。

社会サービスの提供に関連し、地域・グループ間の不均衡の是正

35.新エンゼルプランに基づき保育所の低年齢児受入れの拡大や延長保育、休日保育の推進、放課後児童クラブの推進など保育サービス等子育て支援サービスの充実等の取り組みにより、全国的な子育て支援策の質及び量の拡充を推進している。

児童の経済政策から受ける不利な影響からの保護

 

36.(1)我が国では、児童の養育に係る社会給付として、児童手当と児童扶養手当がある。
 児童手当制度は、児童の養育に伴う家計の負担を軽減し、家庭生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成と資質の向上に資することを目的として、1972年度から実施されている。本制度については、2000年、最近の出生率の低下など、児童や家庭を取り巻く環境の変化を踏まえ、子育て家庭の経済的支援を目的として、支給対象年齢を義務教育就学前(6歳到達後最初の年度末まで)に拡大する改正が行われた。
 離婚による母子世帯等、父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について手当てを支給し、福祉の増進を図ることを目的として、児童扶養手当を支給している。
 児童手当と児童扶養手当の給付については、適用対象となる児童を監護する者等受給資格者の扶養親族等の有無及び数に応じて政令で定める所得制限限度額に従って支給されることとなっている。

(2)困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対する一般法として生活保護法があり、保護は、世帯を単位として、厚生労働大臣の定める基準により測定した需要に収入等が不足する部分を補う程度において行われる。生活扶助は、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なものの範囲内において、住宅扶助は、住居、補修その他住宅の維持のために必要なものの範囲内において、金銭給付又は必要があるときは現物給付によって行われる。

 

(児童手当概要)
支給対象児童 第1子以降の児童
支給期間 義務教育就学前の児童
手当額(月額) 第1子、第2子  5,000円
第3子以降   10,000円
所得制限 415万円(4人世帯・所得ベース)
(2001年6月から)
特例給付 所得制限により手当を受けられなくなる被用者又は公務員のうち、所得が一定額以上の者について、事業主又は所属庁等の負担による児童手当と同額の給付が行われる。所得制限は574万円(4人世帯・所得ベース)(2001年6月から)
支給対象児童数 2,407,489人(2000年2月末日現在)

 

 

(児童扶養手当概要)
支給対象児童 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護、養育している生別の母子世帯等の母又は養育者
手当額(月額) 児童1人の場合
(全部支給)42,370円
(一部支給)28,350円(1999年4月から)
児童2人の場合 5,000円加算
児童3人の場合 1人につき3,000円加算
受給対象児童数 約102万人(2000年3月末日現在)

 

 

 

K.条約の実施を確保するための国際協力

二国間援助

 

37.我が国は、社会開発部門への援助に積極的に取り組んでおり、1999年の実績では二国間ODAの約20%がこの分野に向けられており、1991年以来9年連続して世界第1位のODA供与国である。
 母子の健康、福祉の向上、児童の教育の普及に広く裨益する教育・保健・人口分野における援助については、無償資金協力、技術協力を中心として行っており、1999年の実績は1,572.57百万ドル(約束額ベース)で、二国間ODAシェアでは11.4%を占めている。特に、保健医療分野における無償資金協力の実績は、過去5年間(1994年~1998年)の平均で、一般プロジェクト無償全体の約15%、技術移転、人材育成を目的とした専門家派遣数については全体の約16%、研修員の受入について約17%を占めている。また、現在、保健医療、人口・家族計画、初・中等教育の分野において、専門家派遣、研修員受入れ、機材供与を組み合わせたプロジェクト方式技術協力を実施しているほか、青年海外協力隊を派遣している。教育分野では、小中学校建設計画等のため1999年度で194.51億円の無償資金協力を実施している。
 また、2000年4月に世界各国の代表者が集まり「万人のための教育(Education for All)」に関する世界教育フォーラムがダカールで開催され、2015年までにすべての児童に初等教育の機会を与えるなどの目標を設定した「ダカール行動枠組み」が採択された。さらに7月の九州・沖縄G8サミットでは「ダカール行動枠組み」を強力にサポートし、開発途上国と協力して貧困削減のため教育に焦点を当て、健全な教育戦略を有する国により一層の支援を行うことを目標に掲げた。それを受けて、文部省(当時)の国際教育協力懇談会は今後の協力方策につき検討を行い、2000年11月に報告をまとめた。この報告においては、相手国の教育協力ニーズの把握と計画策定の必要性や、教育協力のODAに占める比率の向上を配慮しつつ、初等中等教育教員による専門家やボランティアとしての教育協力活動の推進、教育協力に関し大学が有する人的資源の活用等の点につき提言がなされた。現在、これらの提言の趣旨を踏まえた協力体制作りを行っている。
 我が国は、地球規模問題に対する貢献として、子供の問題に関する取組を進めており、1993年より開始された日米コモン・アジェンダ(「地球的展望に立った協力のための共通課題」)において、人口・エイズ及び子供の健康を総合した「人口・健康」とのアジェンダを設け、エイズを初めとする感染症対策支援、母子保健、人口 ・家族計画等の基礎保健医療への支援、地球上のポリオ根絶に向けた協力等を推進してきている。
 「人口・エイズ」分野では、1994年2月に我が国が発表した「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティヴ(GII)」の2000年度までの協力目標額30億ドルに対し、当初の目標額を越える約37億ドルを1998年度までの5年間で達成した。
 「子供の健康」分野に関しては、地球上からのポリオ根絶を重点分野と位置付けており、その第一の重点援助地域として我が国がイニシアティヴをとって協力を進めてきた西太平洋地域ではポリオの根絶が成功し、2005年の世界のポリオ根絶目標に向け、南アジア及びアフリカでのポリオ根絶への協力を拡大している。我が国はポリオ根絶に向け、1999年度には37.91億円の拠出を行っている。 また、2000年には、東京大学に、大学等による医学分野の国際協力を推進するための拠点的機能を果たす医学教育国際協力研究センターが設置されたところである。
 開発途上国における女性支援(WID)/ジェンダーでは、全世界の貧困状態にある13億人のうち70%が女性であり、教育、雇用、健康面でも多くの女性が脆弱な立場に置かれていること、また、開発途上国において均衡のとれた持続的な開発を実現していくため、男女の均衡な開発への参加とそこからの受益を図る必要があることから、我が国は、1995年に「WIDイニシアティブ」を発表し、開発援助実施に際し女性の教育、健康、経済・社会活動への参加を重視することとしている。
 2000年7月の九州・沖縄G8サミットでは、エイズ、結核、マラリア等の感染症が途上国の経済社会開発の重大な阻害要因となっていることから、具体的な目標を掲げて、先進国、途上国、国際機関、市民社会を含む「新たなパートナーシップ」の下での取り組みを強化することが合意されたところである。また、この機会に我が国は、議長国かつリーディング・ドナーとしての指導性を発揮するため、「沖縄感染症対策イニシアティブ」として、エイズを始めとする感染症対策を強化し、今後5年間で30億ドルを目途とする協力を行う旨表明した。2000年12月には、九州・沖縄G8サミットのフォローアップとして、G8の他途上国、関係国際機関、NGO等の代表が参加して、それぞれの特性・役割を踏まえ、「新たなパートナーシップ」を如何に機能させ、強化させていくかにつき議論した。

国際機関を通じた協力

38.(1)児童救済分野における協力
 我が国は、国連の児童救済分野の指導的機関である国際連合児童基金(UNICEF)に対し1952年より拠出(一般拠出)を行っており、1999年度の我が国のUNICEFへの拠出は、総額64,778千ドル(政府拠出第3位)であった。また、我が国は、特に女児教育普及を支援するため、1995年度より、UNICEFの女児の教育プログラムに対し、特別拠出として 100万ドルを拠出している。更に、避難民等の児童の救済のため、東チモールへの緊急人道支援(1999年)、コソヴォにおける学校再建事業(2000 年)等のUNICEFによる緊急事業へ拠出をしている。
 また、我が国は、1999年以来UNICEFとのマルチ・バイ協力による援助を行っており、1999年度、アフリカ・アジア・太平洋諸国14ヵ国に対し予防接種拡大計画事業(EPI)に必要なワクチン、機材等約4.3億円分を供与した。

(2)保健・衛生分野における協力
 我が国は、世界保健機関(WHO)やUNICEF等、他援助国・機関との連携を通じ、拡大予防接種計画事業、結核対策事業等の国際保健事業に協力を行っている。特にポリオ対策については、西太平洋地域の根絶のため主要な役割を果たした。また、エイズ対策については、これまで我が国は、国連合同エイズ計画(UNAIDS)設立以来、年間約6億円を拠出し、途上国のエイズ対策への支援を行っている。更に、我が国が国連に設置した人間の安全保障基金を通じて、 8件・総額約230万ドルのUNICEF、国連人口基金(UNFPA)等が実施する母子保健関連プロジェクトを支援した。

(3)女性支援(WID)/ジェンダー分野における協力
 我が国は、国連開発計画(UNDP)、国際農業開発基金(IFAD)を通じて、WID/ジェンダーの視点を取り入れた開発援助の拡充に努力している。我が国は、1995年、途上国の女性支援を目的として UNDPにWID基金を設置し、1999年度までに累計で約1,102万ドルを拠出している。この基金は、ジェンダーの平等化及び女性のエンパワーメントを推進するプログラムを支援するもので、教育、健康、経済・社会活動の参加を重点的に支援するものである。これにより、例えば、カンボディアでは女性の経済的地位向上のため、マイクロ・ファイナンスを通じて貧困撲滅を図るプロジェクトを実施したが、女性の安定的な収入源が確保されることで、子どもたちが労働力として働きに出されることが少なくなり、地元の学校では児童の就学率が約9%上昇した。また、グアテマラでは、女子初等教育の充実を図る国家的取り組みを支援するため、女子教育の関するセミナー開催に対する協力プロジェクトを実施した。
 IFADは、農村開発における女性の役割を重視しており、我が国としてジェンダー分野でのIFADの活動を積極的に支持すべく、1995年に「日本、 IFAD、途上国の女性信託基金(Special Contribution for Women in Development )」を設立した。我が国は、これまで同基金に対し445万ドルの拠出を行うとともに、27件のプロジェクトを承認してきている。具体的には、IFADの融資案件にジェンダーの配慮を付すための各種調査、ワークショップ・シンポジウム開催及びデータベースの構築によるIFADに蓄積された情報・知識の伝播、また、IFADが貧困削減の有力な手段として位置づけているマイクロ・ファイナンスに関する調査等を実施してきている。最近では1999年7月、東京において「アジア危機と農村における貧困」と題したシンポジウムが開催され好評を博した。

(4)教育分野における協力
 我が国は、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)を通じ、次のとおり教育分野での協力を実施している。(イ)アジア・太平洋地域の非識字者への教育の普及と初等教育の完全普及を支援する「教育の完全普及に関するアジア・太平洋地域事業計画(APPEAL)」に対する識字教育信託基金(2001年度4,400万円拠出)及びコミュニティ識字センター信託基金(2001年度2,000万円拠出)、(ロ)各国間の教育協力を強化し、開発途上国が教育制度・内容・方法を自ら発展できるように支援する「アジア・太平洋地域教育開発計画(APEID)」に対する巡回講師団信託基金(2001年度920万円拠出)、(ハ)エイズ予防に関する教育事業への支援としてのエイズ教育特別信託基金(2001年度730万円拠出)等への拠出。また、人間の安全保障基金を通じてコソヴォの学校を再建するUNICEF、UNDPのプロジェクトに総額 1,900万ドルの支援を行った。

NGOを通じた協力

 

39.我が国は、NGO事業補助金や草の根無償資金協力等の制度により、母子の健康、福祉の向上、児童の教育の普及に広く裨益する医療、保健、教育分野において、草の根レベルでの支援活動を行っている我が国NGOに対し資金面での協力を行っており、これらの制度はNGOが被援助国においてきめ細かい援助を実施できるよう大きく貢献している。我が国は1999年度、NGO事業補助金により約348.115百万円、草の根無償により約387.1百万円の支援を行った。

 

(資料)保健・医療分野における援助実績
年度 無償資金協力
(億円)
円借款
(億円)
技術協力(人)
研修員受入 専門家派遣 協力隊派遣
1995 150.45 ( 7.8) 9.69 (0.1) 1,281(12.2) 478(15.2) 173(16.4)
1996 195.37 (10.0) 197.92 (1.5) 1,214(11.1) 464(15.4) 172(14.4)
1997 221.28 (16.8) 55.64 (0.5) 1,237(10.9) 474(15.5) 170(14.7)
1998 253.99 (20.5) 420.98 (3.9) 2,428(12.3) 487(14.2) 185(15.8)
1999 240.28 (20.6) 0 ( 0) 3,154(17.6) 553(13.8) 234(18.1)

*括弧内は一般無償全体(債務救済、ノン・プロジェクト援助、草の根無償、留学生支援無償を除く)、また、円借款全体(債務繰り延べを除く)に占める割合(%)、技術協力は全体に占める割合(%)
*無償資金協力、円借款は交換公文ベース、技術協力はJICAベース。

 

 

(資料)教育分野における援助実績
年度 無償資金協力
(億円)
円借款
(億円)
技術協力(人)
研修員受入 専門家派遣 協力隊派遣
1995 128.87 ( 6.7) 520.73 (4.6) 274( 3.2) 157( 4.7) 193(16.0)
1996 193.29 ( 9.9) 183.58 (1.4) 274( 2.5) 157( 5.1) 234(22.3)
1997 246.21 (12.3) 146.22 (1.4) 341( 3.0) 149( 4.9) 228(19.8)
1998 182.60 (15.1) 351.48 (3.2) 396( 2.0) 193( 5.6) 205(17.5)
1999 194.51 (16.7) 124.95 (1.2) 349( 1.9) 243( 6.1) 219(17.0)

*括弧内は一般無償全体(債務救済、ノン・プロジェクト援助、草の根無償、留学生支援無償を除く)、また、円借款全体(債務繰り延べを除く)に占める割合(%)、技術協力は全体に占める割合(%)
*無償資金協力、円借款は交換公文ベース、技術協力はJICAベース。

 

「子どもサミット」フォローアップ

40.パラグラフ17.参照。

L.条約の広報

(a)条約の広報

各国の言語等への翻訳及び在日外国人の多くが使用する言語への翻訳

41.従前より、日本語及び英語によりリーフレットの作成を行っている。また、仏、西、露、中、アラビア、ポルトガル語、韓国語、タイ語、タガログ語、ベトナム語条約全文を在日外国人からの希望に応じ提供できるようにしている。
 条約の広報は極めて有益であり、これまで行った広報活動の反響や条約の周知の程度を勘案の上、今後も引き続き条約の趣旨、内容、正しい理解等の普及に努めていく予定である。

ホームページ等による広報

 

42.外務省ホームページ(日本語・英語版共)において、児童の権利条約に関するページを設け、児童の権利条約(全文)、第1回政府報告書、同報告書に対する児童の権利委員会の質問及びこれに対する政府の回答並びに条約の最終見解をはじめ、シンポジウム等など各種関連文書を掲載しており、容易な閲覧及びダウンロードを可能にしている。なお、ホームページへのアクセス件数(ページビュー)は2000年4月から2001年3月までに167,884件(うち日本語ホームページへのアクセスは153,896件)である。
 また、外務省情報FAXサービス(MOFAX)においても同様の広報を行っているほか、外務省が編集協力している各種出版物や、講演会等において、この条約の紹介・知識普及に努めている。

学校教育のカリキュラムへの反映

43.学校においては、この条約等人権に関する国際法の意義と役割、基本的人権の尊重、児童の成長や人間形成について指導することとなっている。1998 に告示した学習指導要領においても、児童の権利条約にも留意し、学校の教育活動全体を通じて人権に配慮した教育を行うことを一層推進することとしたところである。教職員を対象とする研修においても、児童の権利に関する条約に関する講座を含む、人権に関する内容を盛り込んでおり、その充実に努めているところである。

(b)児童と係わる公務員等への条約に関する教育

教員

 

44.教員の研修については、各都道府県市において、初任者研修をはじめ、経験年数に応じて行われる教職経験者研修等の機会に人権や生徒指導に係る研修を実施しているところである。
 国レベルの研修を一元的、総合的に実施する独立行政法人教員研修センターにおいても、各都道府県市において中心的役割を果たすことが期待される教員を対象とした研修で人権に関する内容を盛り込んでいるほか、生徒指導、教育相談の理論及び実際について実践的な研修が行われている。

警察官

45.警察官に対しては、警察学校において、新たに採用された警察官や昇任する警察官に対し、少年の保護活動等に関する教育を行っているほか、少年警察活動に従事する警察官や少年補導職員等に対し、児童の権利の擁護に配意した適正な職務執行を期するための専門的な教育を行っている。
 また、職場における教養において、警察官等に対して、児童の権利擁護に関する教育を行っている。

矯正施設職員

46.第1回政府報告の審査後に児童の権利に関する委員会で採択された最終見解では児童の権利に関する訓練について勧告されているが(パラグラフ33)、矯正施設の職員に対しては、矯正研修所及びその支所における各種研修プログラムの中で、児童の権利に関する条約を含む被収容者の人権に関する国際準則の内容についての研修を実施している。例えば、上級幹部職員となるために必要な教育訓練の中で外部講師及び法務省(矯正局)職員により児童の権利に関する条約等を含む国連文書に関する研修を実施し、本条約の趣旨、内容についての周知徹底を図っている。

人権擁護行政に携わる職員

47.人権擁護行政に携わる公務員の研修として、法務省では、全国の法務局及び地方法務局職員に対し、本省において人権に関する専門科研修を毎年実施しており、カリキュラムの中に児童の人権に関する科目を設け、児童の権利条約に関する講義を行う他、研修員が講演者となり、児童の人権をテーマとして模擬講演等を行っている。また、全国の法務局及び地方法務局においても、人権擁護行政に携わる職員を対象として、人権実務研修を実施しており、その中で本条約を始めとする児童の人権に関する講義が行われている。この他、法務省では、地方公共団体の人権啓発担当部局の職員に対し、人権啓発指導者養成研修会等を実施しており、児童の人権及び本条約についての講義を行っている。

入管職員

48.各種職員研修において、児童の権利条約等を含めた人権関係条約について講義を実施した。

保護観察官

49.更生保護行政の基本法である犯罪者予防更生法第2条において、「更生の措置は、本人の改善及び更生のために必要且つ相当な限度において行うものとし、その実施に当っては、本人の年齢、経歴、心身の状況、家庭、交友その他の環境等を充分に考慮して、その者にもっともふさわしい方法を採らなければならない」と定められており、従来から少年の保護観察に当たっている保護観察官に対しては、本条の基準を遵守するよう徹底を図っている。
 特に、新任保護観察官に対しては、保護観察官中等科研修において、本条の趣旨についての理解を深めるとともに、児童相談センターへの実地実習により、少年の保護や福祉について学ぶ機会を設けている。また、少年等の発育に関するカリキュラムを設けているほか、カウンセリングのカリキュラムも設定し、保護観察を受けている少年の意思表明を促すこと、その意思を相応に考慮することの重要性について学ぶ機会を設けている。保護観察官に対し提供された少年等の発育に関するコースの時間数は、保護観察官中等科研修において6時間。

裁判官等

50.裁判官については、最高裁判所において、条約の批准に際し、通知「児童の権利に関する条約の公布及び効力の発生について」を高等裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所あてに発出するなどして、裁判官等の関係者に対する周知を図っているほか、各種研修において、少年事件や子の監護をめぐる諸問題に関する共同研究や、少年事件の報道と人権に関する講義など、児童の権利、保護又は福祉に関する諸問題をテーマとしたカリキュラムが行われており、その中で、児童の権利に関する理解を深めている。
 また、裁判官、検察官及び弁護士になるいずれの者も、原則として、司法研修所において司法修習を受けた後、法曹資格を取得するが、この司法修習においても、子どもの人権に関する講義を行い、本条約の実施やその内容、趣旨(日本政府報告書(1994年)、NGO報告書(1994年)、国連委員会における審査・勧告(1998年)を含む。)についても言及しているほか、少年事件や子の監護が問題となる事件を取り上げたカリキュラムを実施しており、児童の権利、保護又は福祉について学ぶ機会を設けている。
 このような裁判官の研修及び司法修習におけるカリキュラムでは、児童の利益を最大限考慮すべきこと及びこれらの事件において児童の意思を表明させ、これを考慮する必要があることも当然に学んでいる。

検察官

51.検察官に対しては、「児童買春法の制定並びに児童及び女性に対する配慮について」などをテーマとした研修を実施した。
 また、その経験年数に応じて、憲法及び人権に関する諸条約における人権保障、児童の人権問題等の各種人権課題等をテーマとする各種研修を実施した。

児童福祉関係職員

 

52.児童福祉の中心的行政機関である児童相談所の児童福祉司等に対しては、国が実施する初任者研修において条約の趣旨等についての周知を推進している。

(c)専門教育・服務規程

専門教育

53.パラグラフ44.から52.参照。

警察大学校等

54.年1回、警察大学校の少年警察専科において、都道府県警察本部の幹部警察官に対して、児童の権利の擁護に関する教育を実施しているほか、年2回(1998年から実施)、管区警察学校の少年警察実務専科において、都道府県警察の警部補、巡査部長に対して、同様の教育を実施している。
 各都道府県警察の少年サポートセンター等に勤務する少年補導職員等に対しては、大学教授やカウンセラー等の専門家を講師としたカウンセリング技術専科等の集合教育等を実施している。

大学

 

55.大学におけるカリキュラムの編成は、各大学がその理念・目的に応じ、自主的に決定し、自らの責任において実施するものである。
 なお、大学において、児童の権利に関する授業科目は、1999年度現在、110大学174科目(国立大学34大学61科目、公立大学8大学9科目、私立大学68大学104科目)が開設されている。
 具体的には、「子どもの人権」、「少年問題と人権」、「児童問題論」、「児童福祉論」、「子どもの権利擁護・職業倫理」、「児童相談事例研究」などの授業科目を開設し、子どもの権利擁護、子どもが一個の人格として社会参画できる条件作りに関する教育などが行われており、なかには実際に子どもと接するフィールドワーク等を必修科目としている大学もある。

(d)NGOの条約啓蒙・啓発キャンペーンへの参画とNGOの活動の支援

56.我が国のNGOにあっては、地域住民、児童、教職員等の参加で条約の勉強会を開催したり、また、条約に関する冊子を発行する等の活動をしていると承知している。

M.広報の公開・広報措置(第44条6)

報告の作成の方法

57.報告書の作成に当たっては、内閣府、警察庁、防衛庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省が参加した。
 NGOの報告書作成への参加に関しては、パラグラフ27.のとおり、その意見を本件報告書に反映させる目的で、政府との間に意見交換会を二度に亘り開催した。本件会合においては、各回とも、国会議員から約10名、政府から約40名、NGOから約70名の出席があった。

報告の広報

58.パラグラフ42.参照。
 本報告書も同様に外務省ホームページに掲載する予定である。

児童の権利に関する委員会のサマリーレコード及び最終見解の広報

59.パラグラフ42.参照。

II.第1条(児童の定義)

 

A.児童の定義に係る条約と国内法との間の差異

60.我が国では、児童福祉法第4条において、児童を「満18歳に満たない者」と定義している。また、同法第1条第1項において、「すべての国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」、第2項において、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定されており、右に基づき児童の福祉に努めているところである。

61.また、我が国は、児童の人格の完全なかつ調和のとれた発達が確保され、社会の中で個人として生活できるようにするため、現行の各法制の下において、実体面において児童の保護及び福祉をより一層充実させるべく諸施策の拡充に努めているところである。

B.国内法における最低法定年齢

親権者の同意なしに法律、医療相談できる年齢

62.我が国では、民法により、満20歳をもって、単独で法律行為を行うことができることとなっている。したがって、20歳未満の者が法定代理人の同意を得ずに法律・医療相談に係る契約を結んだ場合,当該契約は一応有効であるが、法定代理人は、当該契約を取り消すことができる。

親権者の同意なしに治療・手術を受けることのできる年齢

63.我が国では、民法により、満20歳をもって、単独で法律行為を行うことができることとなっており、20歳未満の者が法定代理人の同意を得ずに病院と医療契約及び手術に関する契約を結んだ場合でも、当該医療契約は一応有効であるが、法定代理人が、当該医療契約等を取り消すことができる。

義務教育終了

64.第1回政府報告パラグラフ40参照。

危険を伴う仕事、パート・タイム、フルタイムの仕事に就業できる年齢

 

65.労働基準法により、満18歳未満の者については、労働時間、休日労働についての制限、深夜業の原則禁止、危険有害業務の就業制限を規定している。また、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了していない児童を労働者として使用することは原則として禁止している。ただし、例外として、非工業的事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、労働が軽易であるものについては、行政官庁の許可により、満13歳以上の児童を使用することができ、また、映画の製作又は演劇の事業については、行政官庁の許可により、満13歳に満たない児童を使用することが可能である。
 なお、労働基準法の規定は、パートタイムの雇用についても適用される。

結婚

66.第1回政府報告パラグラフ39参照。

性的犯罪

67.第1回政府報告パラグラフ45参照。
 また、1999年11月に施行された児童買春・児童ポルノ法は、18歳に満たない者を児童と規定しており、児童買春、児童ポルノを販売等の目的で製造する行為等をそれぞれ処罰することとしている。

軍への任意入隊、徴兵

68.我が国に徴兵制度は存在せず、全て自衛官は志願に基づき採用している。
 また、採用年齢については、教育機関(自衛隊生徒制度)を除き、18歳以上の者を採用することとしている(自衛隊法施行規則(第25条関係)及び自衛隊生徒の任用に関する訓令等)。

敵対行為への参加

69.上記のとおり、自衛官の採用は、教育機関(自衛隊生徒制度)を除き、18歳以上の者を志願に基づくこととしており、また、教育機関に採用した者についても有事において敵対行為に直接参加させることは想定していないため、直接戦闘行為に参加するのは18歳以上の者に限られる。

刑事責任

70.我が国の刑法は、14歳未満の者の行為は罰しない旨規定しており、刑事責任を科し得る最低年齢は14歳である。

捜査段階における身柄の拘束

71.刑事手続の対象となるのは14歳以上の少年であり、捜査段階における身柄拘束がなされる最低年齢も14歳である。ただし、14歳以上の少年についても、少年の特性に配慮し、成人とは異なる取扱いがなされている。

矯正施設への収容

72.我が国には、非行少年の鑑別機関として少年鑑別所、矯正機関として少年院及び少年刑務所があり、勾留中の被告人及び被疑者を収容する機関として拘置監(拘置所)があるが、少年鑑別所は、家庭裁判所の観護措置の決定により送致された少年を収容するとともに、家庭裁判所の行う少年に対する調査及び審判並びに保護処分の執行に資するため、及び懲役又は禁錮の言渡しを受けた14歳以上16歳未満の少年に対する刑の執行に資するため、医学、心理学、教育学、社会学等の専門的知識に基づいて少年の資質の鑑別を行う施設である(少年法第3条、同第17条、少年院法第16条)。
 少年院は、家庭裁判所において少年院送致の保護処分に付された少年及び少年法の規定により少年院において刑の執行を受ける少年を収容し、これに矯正教育を行う施設であり、14歳以上の者を収容することとなっている(少年院法第2条)。
 拘置所は勾留中の少年の被疑者及び被告人を収容しており、少年刑務所は刑事裁判において懲役又は禁錮の実刑の言渡しを受けた少年を収容し、刑の執行を行っているが、我が国の刑法は、14歳未満の者の行為は罰しない旨定めており(刑法第41条)、拘置所や少年刑務所のような行刑施設では14歳以上の者を収容することとなる。

死刑及び無期懲役

73.我が国の少年法第51条は、「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは、無期刑を科する。罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、無期刑をもって処断すべきときであっても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、 10年以上15年以下において言い渡す。」と規定している。すなわち、死刑の最低年齢は、犯行時18歳以上である。無期刑の最低年齢は、法律に特段の定めがないので、刑事責任能力を問うことのできる犯行時14歳以上である。
 なお、改正前の少年法第51条は、犯行時18歳未満の者について、無期刑をもって処断すべきときは10年以上15年以下の範囲内で有期刑を科することとしていた。しかし、2000年11月に成立した少年法等の一部を改正する法律により、無期刑を科すか有期刑を科すかを、裁判所が選択できることとされた。

民事事件における証言

74.民事訴訟手続においては、証人となりうる資格について年齢・能力による制限はない。

刑事事件における証言

75.刑事事件における少年又は幼児の証言能力に関しては、刑事訴訟法上明文の定めはないが、裁判例においては、年齢によって決まるのではなく、具体的事件における状況を前提として、個別的具体的に判断して決すべきものであり、その判断に際しては証言を求められている事項が何であるかも大きな要素であるとした上、強制わいせつ致傷事件において、被害時3歳6月、証言時3歳8月の被害児童の証言に証拠能力を認めたもの(東地判48.11.14判時 723.24)等がある。
 なお、証人が証人尋問の際に受ける精神的・心理的な負担を軽減するため、2000年、刑事訴訟法の一部が改正され、証人の遮へい措置やビデオリンク方式による証人尋問が導入された。

訴訟、賠償請求を提起できる年齢

76.民事訴訟に関しては、単独で提起、追行することができるのは成年者(20歳以上)であるが、刑事訴訟に関しては、成人も含め私人が訴訟提起(起訴)することはできない。

行政・司法訴訟に参加できる年齢

77.行政訴訟及び民事訴訟においては、訴訟手続の主体となることができる資格について年齢による制限はない。

刑事被告人になることができる年齢

78.刑事被告人になることのできる最低年齢は、14歳以上である。被害者は、刑事訴訟手続や少年審判手続で意見を述べることができるが、被害者が児童である場合に、その年齢制限は特にない。

身分関係の変更に同意できる年齢

79.我が国では、民法により、単独で氏の変更、養子となること及び離縁の協議をすることができる年齢は、満15歳以上であるとされている。また、婚姻後は、20歳未満の者でも単独で離婚の協議をすることができる。

家族に関する情報へアクセスできる年齢

80.我が国の戸籍には、氏名、出生の年月日、実父母の氏名、実父母との続柄等が記載されているので(戸籍法第13条)、戸籍の謄抄本によってこれを確認することが可能であるところ、戸籍の謄抄本の交付請求について、特に年齢による制限を設けていない。

相続、財産処理に係る法的能力

81.我が国では、20歳未満の者は単独で有効な法律行為を行うことができないが、相続についての制限はない。

団体の創設、団体への加盟

82.我が国では、民法により、満20歳をもって、単独で法律行為を行うことができることとなっている。したがって、20歳未満の者が法定代理人の同意を得ずに団体の創設又は団体への加盟に係る法律行為をした場合、当該行為は一応有効であるが、法定代理人は、当該行為を取り消すことができる。

宗教の選択、又は宗教的学校教育への出席

83.第1回政府報告パラグラフ100参照。

アルコールその他の規制物質の消費

84.第1回政府報告パラグラフ47参照。
 また、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法においては、20歳未満の者への酒類、たばこ等販売に対する処罰等を規定している。

児童の義務教育終了年齢と最低就労年齢との関係、右関係の教育を受ける権利への影響、及び関連条約の考慮

85.労働基準法は満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了していない児童を労働者として使用することを原則として禁止している。ただし、例外として、非工業的事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、労働が軽易であるものについては、行政官庁の許可により、満13歳以上の児童を使用することができ、また、映画の製作又は演劇の事業については、行政官庁の許可により、満13歳に満たない児童を使用することができる旨規定している。

結婚における法律上の男女間の差異

86.婚姻に関して、我が国では、男は満18歳に、女は満16歳にならなければ、婚姻をすることができないものとされている(民法第731条)。
 このように、婚姻適齢に男女の差異を設けることは、条約第2条の規定に抵触するものではない。
 すなわち、婚姻は、社会の基礎的単位である家族を新たに形成する行為であるから、ある程度の成熟に達していない者には認めるべきでなく、それゆえ、法律は,婚姻に必要な成熟に達していないおそれのある若年者の婚姻を一律に禁止している。しかし、男女の間には、肉体的・精神的側面において、婚姻に必要な成熟に達する年齢に差異がある。婚姻適齢の差異は、このような男女の肉体的・精神的側面の差異に対応したものであって、合理性があるから、条約第2条には抵触しない。

性犯罪等における法律上の男女間の差異

87.性犯罪等の犯罪に関して、刑法上、男女間で異なる取扱いをしていると思われる規定は、次のとおりであるが、いずれも男女の肉体的・生理的差異等を考慮して取扱いを区別したものであり、本条約第2条にいう「差別」には当たらない。
 同法第177条(強姦罪)、同法第181条(強姦致死傷罪)、同法第214条(強盗強姦致死罪)、同法第182条(淫行勧誘罪は、犯罪の客体を女子のみに限定している。しかし、上記の各犯罪の主体としては男女の区別はない上、犯罪の客体についても、刑事法学的にこの種の行為は男子が女子に対して行われることが通常であることや男女の肉体的・生理的差異等を考慮して女子に限定しこれを保護するものであり、単なる区別にすぎない。なお、同法第176条(強制わいせつ罪)、第181条(強制わいせつ致死傷罪においては、犯罪の客体につき男女の限定がないことから、男子が性的暴力被害に遭った場合には、これらの規定により、処罰が確保されている。
 同法第213条(同意堕胎罪、致死傷を含む。)、同法第214条(業務上堕胎罪,致死傷を含む。)、同法第215条(不同意堕胎罪)、同法第216条(不同意堕胎致死傷罪)は、犯罪の客体を女子に限定しているが、犯罪の主体としては男女の区別はない上、犯罪の客体を女子に限定したのは、懐胎するのは女子であるという男女の肉体的・生理的差異に基づくものであり、これによって胎児及び母体の生命・身体を保護しようとするものであって、単なる区別にすぎない。
 また、同法第212条(自己堕胎罪)は、犯罪の主体を女子に限定しているが、この罪は、胎児及び母体の生命・身体を保護しようとするものであり、女子の右犯罪に関与した男子は、共犯やその他の堕胎罪により処罰されることもあり得るのであって、特に女子を不利に取り扱うものではない。

刑法における思春期の基準

88.刑法における思春期の基準は用いられていない。

III.一般原則

 

A.第2条(差別の禁止)

(a)憲法又は児童関連の国内法における差別の禁止の原則・条約に定める権利が差別なく保障されるためにとられた措置

 

89.第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答14.参照。
 具体的には、以下の例が挙げられる。

(1)憲法の精神に則り、児童福祉法が、その第1条第2項において、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定している。

(2)児童福祉法をはじめ、児童手当法、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法等の支給に関する法律等には国籍要件はなく、国籍によって取り扱いに差異は設けられていない。

(3)児童買春・児童ポルノ法は、国籍等を問わず、すべての18歳未満の児童に買春行為等をした者を処罰している。

(4)第1回政府報告パラグラフ48で述べたとおり、国による児童に対するあらゆる形態の差別が禁じられており、少年鑑別所、少年院、行刑施設のいずれにおいても、収容された少年を公平に処遇することを基本理念とし、差別的な取扱いがなされることのないよう配慮がなされている。

(5)2000年12年12月には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が公布、施行され、基本理念として、国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他様々な場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用等を旨として行わなければならないとされている。文部科学省では、関係機関等に対し、本法律の公布・施行にあわせ、学校教育・社会教育における人権教育を進めるに当たって、本法律の基本理念に則って一層適切に行われるよう、周知を行ったところである。

(b)差別があった場合に対抗できる措置

 

90.第1回政府報告51から53参照。

(c)最も不利な立場におかれている児童への差別防止

 

91.第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答15.参照。

92.障害者基本法第3条において、すべての障害者の個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有し、あらゆる分野の活動に参加する機会を与えることが定められている。

 

93.法務省の人権擁護機関では、児童の人権を含め、人権を尊重することの重要性を広く国民一般に認識させ、人権尊重思想の普及高揚を図るため、講演会・座談会の開催、テレビ・ラジオの放送、パンフレットの配布など積極的な啓発活動を展開しており、これらの活動は児童の人権問題発生の予防に寄与している。また、児童を含めたアイヌの人々、障害者、外国人に対する偏見・差別をなくすため、日常的な啓発活動のほか、人権週間(毎年12月10日の「人権デー」を最終日とする1週間を「人権週間」と名付け、大規模な啓発活動を行っている)、人権擁護委員の日(6月 1日)などに街頭啓発、講演会などを通じて全国的な啓発活動を実施している。
 また、児童を含めた嫡出でない子、アイヌの人々及び障害者に対する具体的な差別事象が発生した場合には、人権侵犯事件として、侵害の排除に向けて適切な措置を採るなどして対処している。

 

94.1951年の難民の地位に関する条約(難民条約)及び1967年の難民の地位に関する議定書(同議定書)で定義された難民(条約難民)及び条約難民認定申請者につき、国籍、氏名等人定事項については、難民認定を行う法務省においては、本人のプライバシー保護及び安全の確保の観点から、一切明らかにしておらず、条約難民又は右申請者(の児童)という事実をもって、直ちに社会的差別を受けるものではない。
 なお、我が国は1981年の難民条約及び1982年の同議定書への加入にあたって、右条約の誠実な履行を確保するために国内法の整備を行い、国民年金法、児童手当法、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の支給に関する法律から、国籍要件を撤廃しており、原則として自国民あるいは一般外国人と同じように右受給資格を得られることとなっている。

(d)女児への差別根絶のための措置、第4回世界女性会議のフォローアップとしてとられた措置

95.我が国は、第4回世界女性会議において採択された「北京行動綱領」の要請を受け、1996年12月に「男女共同参画2000年プラン」を策定し、「北京行動綱領」で提示された新たな国際規範・基準を国内に取り入れ、諸施策を進めてきた。
 1999 年6月に、男女の個人としての尊厳が重んじられること、男女が性別による差別的な取扱を受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることなど、男女の人権の尊重を基本理念の1つとする「男女共同参画社会基本法」を制定した。2000年12月には、同法に基づき男女共同参画基本計画を策定し、政府は施策を総合的かつ計画的に推進している。
 同計画の中では、意識の改革等の目標も掲げている。男女共同参画を実現するに当たっての大きな障害の一つは、人々の意識の中に長い時間をかけて形作られてきた性別に基づく固定的な役割分担意識であり、このような意識は、時代と共に変わりつつあるものの、国民個々の生活には未だに根強く残っていることから、国民すべてに男女平等及び人権尊重の意識を深く根づかせるため、多様な媒体を通じた広報・啓発活動を積極的に展開している。

96.第4回世界女性会議のフォローアップ会合である国連特別総会「女性2000年会議」に我が国より岩男壽美子男女共同参画審議会会長を首席代表とする、NGO(岩男代表を含め4名)、顧問議員団(5名)、外務省、人事院、総理府、文部省、厚生省、農水省、労働省等約40名からなる代表団が出席した。
 また、我が国は、JUSCANZ(日、米、加、豪、NZ、ノールウェー、アイスランド、スイス、リヒテンシュタイン、韓国、サン・マリノ)の一員として協議に参加し、性別データの整備、教育の充実、農山漁村における女性の地位の向上等の事項が成果文書に盛り込まれるよう努力した。

(e)被差別集団に関するデータ収集

97.パラグラフ29.参照。

(f)社会・民族的緊張、レイシズム及び外国人蔑視に資するような児童に対する態度や偏見を防止・根絶

98.パラグラフ91.から94.参照。

(g)児童が差別や処罰をうけることからの保護

99.パラグラフ89.参照。
 また、外国人児童に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、関係機関と連携しつつ、被害児童の救済を図り、あるいは関係者に対して人権尊重の思想を啓発するなどして、問題の解決に向けて積極的に取り組んでいる。

(h)第2条の実施の際の主要な問題点・その問題の解決のための計画・差別防止における進捗状況の評価

100.障害者基本法第7条の2に基づき障害者基本計画を定め、実施状況を適宜点検し、計画の着実な実施を図っているところである。

101.法務省の人権擁護機関が取り扱った外国人に対する人権侵犯事件の中には、「公衆浴場における入浴拒否」事案、「外国人を中傷する噂の流布」の事案などがある。また、永住の外国人に対する差別言辞事案や差別落書き事案等の発生が見られる。
 法務省の人権擁護機関は、国内に在留する外国人に関する相談に対応するため、特に英語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京、大阪、名古屋、広島、福岡、高松の各法務局と神戸及び松山の各地方法務局に設置している。ちなみに外国人のための相談所における相談内容は、労働条件、婚姻・離婚、夫婦関係、帰化・国籍取得、損害賠償、刑事関係など多岐にわたっている。
 法務省の人権擁護機関は、人権侵犯事件の調査・処理や人権相談を通じて関係者に人権尊重の思想を啓発するなどして、問題の解決に向けて積極的に取り組んでいる。
 法務省に設置された人権擁護推進審議会から、2001年5月に人権救済制度の在り方についての答申がなされた。
 答申では、政府からの独立性を有する人権委員会(仮称)を中心とする新たな人権救済制度を創設し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病,性的指向等を理由とする社会的生活における差別的な取扱いを含む一定の人権侵害に関して、より実効性の高い調査手続と救済手法を整備した積極的救済を図るべきであると提言している。
 政府としては、同審議会の答申を最大限尊重し、提言された新たな人権救済制度の確立に向けて、全力を尽くしていく考えである。

B.第3条(児童の最善の利益)

(a)「児童の最善の利益」の原則の憲法及び関連国内法、規則への反映

102.児童福祉法第1条は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、育成されるよう努めなければならない」と規定されているほか、同法第2条、3条及び母子保健法第3条等の法律等において各々児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。
 また、1997年の児童福祉法の改正においては、下記のような改正が行われ、行政府が児童の最善の利益を一層考慮することとなった。

(1)児童相談所が施設入所などの措置を行う場合の専門性と客観性を高めるため、児童本人の意向を聴くことを明確化した。

(2)児童若しくはその保護者の意向が児童相談所の措置方針と一致しないとき、又は児童相談所が必要と認めるときには、医療や法律などの専門家からなる審議会の意見を聴くこととした。

(3)保育に関する情報の提供に基づき、保護者が希望する保育所を選択できる仕組みに改めた。
 さらに、児童福祉法においては、児童の最善の利益を確保するため、都道府県は家庭裁判所の承認を得て、児童を児童養護施設等へ入所させることができること、児童相談所長は、家庭裁判所に対し、親権者の親権を喪失させるよう請求できることが規定されている。

103.児童買春・児童ポルノ法1条は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする」と規定するとともに、同法は、捜査及び公判における配慮、児童に係る記事等の掲載等の禁止、心身に有害な影響を受けた児童の保護の規定等を設けている。

(b)「児童の最善の利益」の原則への考慮

児童福祉施設

 

104.児童福祉施設の設備及び運営についての基準については、厚生労働大臣が定める「児童福祉施設最低基準」(省令)により規定されており、児童福祉法に基づき、児童福祉施設の設置者はこれを遵守しなければならないこととなっている。
 児童福祉施設最低基準では、第1章総則で、児童福祉施設の構造設備の一般原則、非常災害、職員の一般的要件、衛生管理、給食、入所した者及び職員の健康診断等を規定するとともに、第2章から第11章までのそれぞれの児童福祉施設ごとに設備の基準、職員の数、資格等につき詳細に規定している。
 更に、都道府県知事は、最低基準を維持するため児童福祉施設の長に対して必要な報告を求め、定期的に施設に立ち入り、設備・運営等を検査でき、必要な改善を勧告し命令することができ、また、事業の停止を命令することができることとなっている。

新エンゼルプラン

 

105.パラグラフ34.参照。

家事審判

106.家事審判法1条及び家事審判規則1条は、各々児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。家事審判は、これらの規定にしたがって行われており、児童の最善の利益が考慮されているといえる。

少年審判

107.少年法1条及び少年審判規則1条は、各々児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。少年審判は、これらの規定にしたがって行われており、児童の最善の利益が考慮されているといえる。

矯正施設

108.上記のとおり、少年法第1条において児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。矯正施設について詳細に述べれば以下のとおりである。
 少年鑑別所においては、少年を明るく静かな環境に置いて少年が安んじて審判を受けられるようにすることとされており(少年鑑別所処遇規則第2条)、少年院においては、少年の心身の発達程度を考慮して、明るい環境のもとに、心身ともに健全な少年の育成を期して処遇を行わなければならないとされており(少年院処遇規則第1条)、また、行刑施設では少年の心身の発達程度に応じて教育、職業訓練等を実施し、健全な少年の育成を図ることに配慮しており、それぞれの施設に収容された少年の処遇の目的に照らして少年にとって何を行うことが最も利益となるかを考慮しながら処遇を行っている。

養子縁組

 

109.我が国においては、未成年者を養子とする養子縁組としては、民法に基づく普通養子縁組及び特別養子縁組とがある。
 普通養子縁組は、養親と養子との間に嫡出子としての法定親子関係を生ぜしめる行為であるが、養子となるべき者が未成年者であるときは、原則として家庭裁判所の許可が縁組成立の要件とされ、養子となるべき未成年者が満15歳以上であれば,未成年者自身が当事者となり、満15歳未満であるときは、法定代理人が当事者となるが、家庭裁判所は、職権で、未成年者の意見を聴取することができる。この許可に当たっては、家庭裁判所は、養子縁組が未成年者の福祉に合致するかどうかという基準により判断している。
 また、特別養子縁組は、養親と養子との合意ではなく、養親となる者の請求に基づき、家庭裁判所の審判により成立することとされており、子となる者は原則として請求時に6歳未満の者に限り、特別養子縁組によって、養子と実方の父母及びその血族との親族関係が終了する。このことから、特別養子縁組の成立には、実父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であること等の事情があって、子の利益のために特に必要があると認められることを要し、また、父母が意思を表示することができない場合又は父母による虐待等、養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合を除いては、実父母の同意が要件とされる。
 以上のように、養子縁組に当たっては、養子となるべき未成年者の利益に最大限の考慮が払われている。

政策の立案・決定に際しての調査

110.国内の各種政策の立案・決定に当たり、児童の育成という施策分野の特質ゆえに、無作為抽出対照実験のような調査を行うことはできない場合が多いが、児童及び親や教師などの関係者の意識・生活の動向等について常に調査研究が行われ、また、人口、世帯、社会基盤など児童に密接にかかわる統計や指標も整備されていることから、これらが各種政策の立案・決定に積極的に活用されているものと理解している。
 なお、各種施策の立案・決定に当たっては、多くの場合、事前に審議会や研究会などにおいて、行政官以外の様々な分野の専門家が、豊富な統計・調査データ等を基に多角的な検討を行っており、こうした過程を通じて、施策対象となる児童の最善の利益が予め考慮されていると考える。

(c)児童の保護・養護の確保

111.第1回政府報告書パラグラフ55参照。

112.児童福祉法に基づき、保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を発見した者は、児童相談所等へ通告しなければならないこととなっている。児童相談所では、児童福祉法に基づき、保護者たる親権者又は後見人が著しくその監護を怠るなど、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合には、当該児童を乳児院や児童養護施設等に入所させる等の措置をとることができる。なお、施設への入所措置等が保護者の意に反する場合は、家庭裁判所の承認を得た上でかかる措置をとることができることとされている。

113.児童相談所への児童虐待に係る相談件数が急増するなど、児童虐待に関する問題が深刻化していることから、児童虐待の防止等に関する法律が2000年11月に施行された。この法律に基づき児童虐待の早期発見・早期対応及び被虐待児童の保護等を促進する施策を一層推進している。

(d)第3条の3に基づきとられた措置

114.第1回政府報告書パラグラフ56参照。
 パラグラフ104.参照。

(e)「児童の最善の利益」の原則に係わる専門家に対する研修

115.パラグラフ44.から52.参照。

C.第6条(生命、生存及び発達に対する権利)

児童の生命に対する権利を保障し、児童の生存及び発達を確保するための環境の創出

116.児童福祉法第1条第2項は「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と規定している。さらに、母子保健法第3条が「乳児及び幼児は、心身ともに健全な人として成長してゆくために、その健康が保持され、かつ、増進されなければならない」と規定しており、これに基づき周産期・小児医療体制の整備等により、小児の健康保持を増進しているところでる。

児童の自殺防止及びそのモニター

117.少年期は、悩んだり、不安を抱いたりするものであり、学校の成績や友人関係等の問題について、誰にも相談できないまま解決策を見出せず、自ら命を絶ってしまう場合がある。警察では、街頭補導活動や少年相談活動等あらゆる警察活動を通じて、自殺企図少年の早期発見を行うとともに、当該少年を発見した際には少年相談専門職員や少年補導職員等による専門的なカウンセリングを実施するとともに、保護者等と連携した支援活動等を行い、少年の自殺防止に努めている。
 また、都道府県警察の少年サポートセンター等に、ヤングテレホンコーナー等の相談窓口を設け、非行問題、学校問題、家庭問題のほか、自殺に関する少年相談を常時受け付けるなどの対応をしている。

118.児童が自ら生命を絶つということは、理由の如何を問わず決してあってはならないことであり、文部科学省では、心の教育を重視し、各学校において、学校教育活動を通じ、お互いに思いやり、尊重し、生命や人権を大切にする態度を育成し、生きることのすばらしさや喜び等について児童に適切に指導するよう、教育委員会を通して指導の徹底に努めているところである。
 また、悩みを持った児童が、いつでも気軽に相談できる体制を充実させるため、文部科学省では、スクールカウンセラーの配置の拡充や、「心の教室相談員」の配置など学校における相談体制の充実を図るほか、児童のための24時間電話相談の配置を推進しているところであり、各都道府県においても、教育センター等に児童を対象とした相談機関を設置するなど、地域における相談体制の充実に努めている。

児童の生存及び特定の年齢層が特に強く晒されている危険(性感染症、ストリート・バイオレンス)の防止

119.増加する犯罪被害から児童を守るために、警察庁では、1999年12月、「女性・子どもを守る施策実施要綱」を制定し、児童を犯罪から守るための対策を強化しているところである。

 具体的には、

(1)通学路・公園等を重点としたパトロール等警戒活動の強化

(2)防犯ブザー等防犯機器の無料貸出、防犯講習会の実施等

(3)児童が被害者となる事案の発生状況に係る情報(地域安全情報)の提供

(4)児童の緊急避難先となる「子ども110番の家」などの自主的防犯活動への支援

(5)児童が行方不明となった場合に捜索、発見活動を行う「子ども発見ネットワーク」の構築 等に取り組んでいる。

 また、防犯灯、防犯ベル等の整備、死角となる草むらの除去等により犯罪被害に遭いにくい環境整備を図る「安全・安心まちづくり」についても市町村等と連携して実施しており、この一環として、2000年度予算において、パイロット事業として、街頭緊急通報システム(いわゆるスーパー防犯灯)を全国10箇所に設置することとしている。

学校における性感染症防止対策

120.1998年に改訂した学習指導要領において、中学校の保健体育科で、新たにエイズ及び性感染症を取り上げることを明記するなど、性感染症等の予防に関する指導内容を充実した。また、小・中・高等学校における児童生徒用教材の作成・配布、推進地域における実践研究、教職員対象の研修会の開催などの施策を実施しており、さらに、2001年度に、新たに教師用参考資料の作成・配布を行うこととしている。

D.第12条(児童の意見の尊重)

(a)児童の意見の尊重への考慮

121.第1回政府報告パラグラフ61・62参照。

(b)立法その他の措置

学校

122.学校において児童生徒に対し、懲戒を行う際には、当該児童生徒等から事情や意見をよく聞く機会を持つなど児童生徒等の個々の状況に十分留意し、その措置が単なる制裁にとどまることなく真に教育的効果を持つものとなるよう配慮することについて、教育委員会等に指導してきたところである。一方、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するための制度である出席停止は、児童生徒の権利・義務に直接関わる処分であることから、その適用については適正な手続を踏むことが重要であり、従来から通知において当該児童生徒や保護者の弁明を聴く機会をもつことが望ましいこと、文書の交付により行うことが適当であることなど指導してきたところである。
 また、文部科学省では、第151回通常国会において、学校教育法を改正し、出席停止制度について、要件及び手続の明確化並びに出席停止期間中の児童生徒の学習の学習支援等について規定したところである。

矯正施設

123.少年鑑別所では、資質の鑑別の際に、少年の鑑別の妥当性確保の観点から、必要に応じ、得られた資料を少年に説明し、少年に自由に意見を述べさせ、これをもとに面接を進めている。少年院では、少年から処遇又は一身上の事情に関する申立をきくため、院長は随時在院者に面接するよう努めなければならないとされており(少年院処遇規則第4条)、行刑施設でもその施設の措置や一身上の事情について少年が申立を行いたいと願い出た場合は面接を実施することとされている(監獄法施行規則第9条)。また、これら施設の長が行うもののほか、矯正施設においては、職員が少年との日々の接触の中で日常生活や処遇の内容について少年の意見を聴取することが実務上行われている。

大学

124.パラグラフ55.参照。

施設入所等

125.児童福祉法(第26条)及びこれに基づく政令により、児童の意見が尊重されるよう、以下のような措置が採られている。

(1)都道府県知事(又はその権限の委任を受けた児童相談所)が施設入所等を決定するに当たり、児童若しくはその保護者の意向が当該措置と一致しないときは、法律・医学等の専門家が参加する都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならないこと。

(2)施設入所等に際し、児童の意向を尊重するべきことを明文の規定に置いたこと。

 さらに、施設生活においては、

(1)2000年6月より施行された社会福祉法に基づき、利用者からの苦情解決に係る社会福祉事業の経営者の努力義務を規定するとともに、都道府県が社会福祉協議会に運営適正化委員会を設置し、利用者からの苦情の相談に応じ、苦情の解決の斡旋等を行う仕組みを設けることとし、

(2)児童福祉施設については、児童福祉施設最低基準を改正し、2000年9月から、施設は入所児童等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない等とした。

児童相談所における措置等

126.児童相談所が児童に対して児童福祉法に基づく措置を採る場合や解除する場合には、児童及び保護者の意向を確認することを児童福祉法第27条第8項で定めている。

(c)司法上及び行政上の手続において児童の意見を聴取される機会等

司法上の手続

127.司法上の手続に関して、我が国では、一般的に、自らが裁判の当事者又は利害関係人となる場合には、自己の意見を述べる機会が保障されている。
 しかし、人事訴訟、身分関係の発生、変更、消滅に関する家事審判及び家事調停の各手続においては、事理弁識能力を欠く未成年者は法定代理人を通じて手続上の行為をしなければならず、また、民事訴訟(人事訴訟を除く。)、行政訴訟及び民事調停の各手続においては、未成年者(20歳未満)は法定代理人を通じて手続上の行為をしなければならない。

 少年審判手続・刑事訴訟手続に関して、

(1)被告人等としての意見表明
 少年審判については、審判期日には、少年及び保護者を呼び出さなければならないとされているとともに(少年審判規則第25条第2項)、審判期日を付添人に通知しなければならないこととされたことから(同規則第28条第5項)、少年、保護者及び付添人は、審判の席において、裁判長の許可を得て、意見を述べることができるほか(同規則第30条)、裁判長は、審判の席には、少年の親族、教員その他相当と認める者の在席を許すことができるとされ(同規則第29条)、審判は懇切を旨として和やかに行うこととされている(少年法第22条第1項)ことから、少年、保護者等が自由な雰囲気の中で意見を陳述することができるような配慮がなされている。また、少年等に意見を陳述する機会が与えられていることを前提として、少年等の陳述要旨の調書への記載に関する規定(同規則第12条、第33条第2項第4号、第5号)等が置かれており、児童の意見聴取の機会は与えられている。なお、我が国では、少年が罪を犯した場合には、少年法等により、すべての事件について、保護手続を行う家庭裁判所により保護処分が適当か否か検討されるが、犯行時14歳以上の少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件を犯した者で、刑事処分に付するのが相当と判断された場合には、刑事手続に移行する。そして、刑事手続においても、刑事訴訟法に基づき、冒頭手続で被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならないとされ、証拠調べが終わった後、被告人及び弁護人は、意見を陳述することができるとされている。また、被告人が任意に供述する場合には、裁判長はいつでも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができるとされている。

(2)被害者としての意見陳述
 少年審判においては、2000年に少年法の一部が改正され、家庭裁判所は、犯罪少年又は触法少年に係る事件の被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹から、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは、自らこれを聴取し、又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させるものとすることとされた(少年法第9条の2)。
 また、刑事訴訟手続においては、2000年に刑事訴訟法の一部が改正され、裁判所は、被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹)から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとすることとされた(刑事訴訟法第292条の2)。

矯正施設に収容された少年

128.矯正施設に収容された少年について、その少年に影響を与える手続を行う際にその少年の意見を聴取する機会の付与については、第1回政府報告パラグラフ71に述べたとおりであるが、更に懲戒及び懲罰の際の手続について詳細に述べれば、以下のとおりである。
 少年院において懲戒を行う場合及び行刑施設において懲罰を行う場合には、少年院では、少年院法第15条に基づいて定めた院内規則に基づき、行刑施設では法務大臣訓令に基づいて、あらかじめ、本人に規律違反行為の容疑事実を告げた上、事情聴取の過程で少年から事情を聞き,懲戒又は懲罰について審査する場に少年を出席させて弁解の機会を与え、少年が出席しない場合にはその者の弁解を記載した書面を提出させることとしており、弁解の機会を十分に与えている。

(d)児童が意思決定過程に参加する権利を有する機関及び機会についての情報

129.近年、国民に広く関わりを持つ政策立案に当たっては、例えば各種審議会等が調査審議の過程で広く国民の意見の公募を行ったり、内閣総理大臣あてに電子メール、ファックス等による意見表明の機会が常時用意されるなど、国民から直接意見を聴取する機会を設けることがしばしば行われており、児童も国民の一部として、こうした意見表明の機会に積極的に参加することが期待されている。
 児童に直接関係のある政策分野においても、児童は重要な利害関係者の一部であり、そうした政策の立案には児童も参加させるべきであるとの認識は、政策立案に携わる公務員の間で浸透しつつある。

130.学習指導要領では、小・中・高等学校段階において、学級活動・ホームルーム活動(学級を単位として、学級の生活の充実と向上等に資する活動として、児童生徒が話し合い、協力して学級内の組織作りや仕事の分担処理等の活動を行うもの)や児童会活動・生徒会活動(学校の全児童生徒をもって組織する児童会・生徒会において、学校生活の充実と向上に資する活動を行うもの)を実施することを定めており、各学校において児童生徒が意思決定に参加している。

(e)児童関連の専門家に対する児童の意思表明を促すための研修

131.パラグラフ44.から52.参照。

(f)世論、協議及び陳情の評価から得られた児童の意見の法律、政治、司法決定への反映

132.児童福祉施設最低基準(省令)において、児童福祉施設は、処遇に関する入所している者又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付ける窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないと規定されている。

133.ストックホルムで開催された第1回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議において、日本からの児童ポルノの発信や、日本人による海外での児童買春が批判されたことなど、国内外からの児童買春、児童ポルノを規制すべきであるとの声の高まりを受け、児童の権利に関する条約の精神を踏まえ、より一層児童の保護を図るために児童買春・児童ポルノ法が制定された。

IV.市民的権利及び自由(第7条、8条、13~17条及び37条(a))